「農民」記事データベース20090119-860-06

風雪の道歩んだ20年―(中)―

農民連歴代代表3氏大いに語る

新春てい談

小林 節夫さん
佐々木健三さん
白石 淳一さん


国際語にもなった 「産直」運動
ふるさとネット 準産米を展開
消費者との共闘の大切さ 食健連

 農民連の代表が国会で意見陳述

 佐々木 BSEのたたかいでは、農水省前に牛を連れていきました。牛をトラックから降ろすときに少し暴れましてねえ。

 小林 背広姿で佐々木さんが牛をなだめる姿は、いまでも語り草だ。

 佐々木 野党が呼びかけて、BSEで生じた損害を補償しろ、という緊急の集会も開かれたけれども、そもそもは農民連のがんばりがあったからなんだ。やはり、国会内外のたたかいあってこそだね。

 小林 WTO協定のとき、国会に呼ばれて意見陳述した。後ろに本部の真嶋さんたちが控えていて心強かった。ある議員が私に質問したとき、その議員の「米の自由化反対」という選挙公約を真嶋さんがタイミングよくぱっと出してきたので、「WTO協定に賛成というのは公約違反じゃないか」と言ってやったんだよ。あとでその議員は「あれにはまいった」と言っていたそうだ。

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“WTO協定は受け入れるな”―なまはげも怒ったゾ!(1994年12月)

 画期的な分析センターの発足

 白石 もうひとつの特徴は、自民党農政とのたたかいでした。戦後農政の「総決算」だと言って「構造改革」を推し進めましたが、いま行われている「品目横断対策」は最悪の対策です。大規模農家を育成するといって、一番苦労しているのが大規模農家ですから。価格対策をなくしたことが、どれだけ農家の生産意欲を奪ってきたか。ここを変えていかない限り農業の再生はない。

 「産直」が国際語になろうとしています。私たちは「ものを作ってこそ農民」を合言葉に、新日本婦人の会との産直をはじめ、「もうひとつの流れ」を作ろうと奮闘してきました。ふるさとネットワークも、大手流通が強まるなか、準産直米など全国で事業を展開しています。

 佐々木 食品分析センターの発足も画期的でしたね。そもそもの経緯はどうだったんですか。

 小林 WTO協定のなかにSPS(衛生と植物防疫のための措置)協定というのがあって、多国籍企業のいいなりに安全基準が変えられることがわかった。「輸出国が安全だと言ったら輸入国は口出しできないなんて、こんなバカなことはあるか」ということです。それで、全国にカンパを呼びかけたのですが、あんなに集まるとは思わなかった。

 横浜の港湾労働者と海上デモをしたときに、まっ赤にさびたドラム缶に入った野積みの輸入野菜があるというので見に行ったけど、驚きましたねえ。その後、同様の港見学のとりくみが広がって、「それでもあなたは食べますか」というビデオもかなり普及し、私たちはどんなに食の安全が脅かされているかということを体で知ったんだと思います。そういう“体で知った”ということが、大きな力になった。

 白石 各地の産直センターが本当に喜んで、カンパもしてくれました。おれたちの作っているものは大丈夫なんだ、それをキチンと検査してくれる食品分析センターがあるんだと。

 佐々木 海外の人たちも食品分析センターを見学するとビックリして、「こんなところは世界にはない」と大きな評価をしてくれます。新日本婦人の会では、ベビーフードや学校給食のパンの安全検査をして告発するなど、一番活用しているんじゃないですか。

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横浜港で労働者と農民が海上デモ(1988年7月)

 食と農を守る力食健連の運動

 白石 食健連がおおいに食品分析センターの活動を支えてくれます。海外の人たちがもうひとつ感心することは、その食健連の運動です。

 国民の健康と食を農民だけでなく、消費者も労働者も自分の問題として、いっしょになって励ましあいながら要求を掲げてたたかっている。しかも政党から独立している。

 たとえば、食健連は昨年1年間に農水省に14回も申し入れや交渉をしています。食健連の運動が、いまの食と農の問題を押し返す力になっていることは明白です。

 小林 食健連を発足させるときに、名前をどうするかという問題があってね。ひとつは「食糧」か「食料」か。結局、「米からパンへ」国民の胃袋が変えられたんだから、農業問題の基本点は「食糧」にあるということになった。もうひとつは、日本母親大会実行委員会の升井とめをさんだったと思うが「単なる連絡会じゃだめ。運動を入れなきゃ」と言うので、「国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会」になった。

 そういう発足からの方針が参加団体に自覚され、さらに運動が広がっていると思います。

 佐々木 BSEの調査でアメリカに行ったとき、「消費者の代表も来ている」と言うと、アメリカの食肉協会の代表もグッと構えるわけです。現場にいて共闘の大事さをつくづく感じますね。

(つづく)

(新聞「農民」2009.1.19付)
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2009年1月

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