農民連20周年記念への連帯メッセージ
ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域コーディネーターのヘンリー・サラギさん
ビア・カンペシーナのヘンリー・サラギさん(東南・東アジア地域コーディネーター)から、「農民連20周年記念への連帯メッセージ」が届きました。
ビア・カンペシーナは、農民連の20周年をお祝いします。
現在、私たちは食糧危機、気候危機、エネルギー危機、金融危機に同時に直面
しています。これらの危機は、資本主義システムと、経済と利益を優先する新自由主義モデルの一環として経済活動の様々な領域における抑制のない規制緩和という共通
の原因によって発生しています。世界の農村地域では、資本と多国籍企業が土地と自然資源(水、森林、鉱物、生物多様性、土地など)を支配しようと猛烈な攻撃を加えており、それは農民と先住民から領域と財産を奪う民営化戦争に移行しています。この戦争では、偽りの口実と故意にわい曲された主張が使われています。例えば、アグロ燃料は気候・エネルギー危機の解決策であると主張されていますが、実際にはまったく逆です。民衆が権利を主張し、この略奪に抵抗したり移住の流れに加わることを余儀なくされる時には、犯罪人扱いとして抑圧を受け、政治犯や暗殺、恥辱の壁、軍事基地の増加という反応が返ってきます。
それにもかかわらず、現在の危機的状況はチャンスでもあります。なぜなら、食糧主権は人々の暮らしと現在のグローバル危機打開にとって、唯一ほんとうの対案を提案しているからです。食糧主権は、小農民と家族農業によって生産された地場産の食糧によって食糧・気候・エネルギー危機に対応し、食糧の長距離輸送と工業的農業という二つの主要な温室効果ガス排出源に対抗します。また、食糧の先物取引に対する投機を禁止することによって、金融危機にともなう無法な状況の打開を提案しています。支配的なモデルが危機と死をもたらすのに対し、食糧主権は農村の人々と消費者に希望と命をもたらします。食糧主権は、国内食糧市場の保護と国家による管理、地産地消の奨励、土地を取り戻すためのたたかい、先住民の領域の保護、包括的農地改革を必要とします。これに加えて食糧主権は、小農民、家族農業者、先住民の知識にもとづき、農薬と遺伝子組み換えを使わない持続可能な農業に向けた生産モデルへの転換を基礎にするものです。一般的な原則として、食糧主権は、地域の実体験の上に成り立っています。
近年、食糧主権の概念はエクアドル、ボリビア、ネパール、マリ、ニカラグア、ベネズエラなどの国で、憲法や法律に盛り込まれるようになりました。私たちは、日本でもなるべく早く食糧主権の概念が憲法に盛り込まれるようになることを希望しています。
私たちは、食糧主権を実現するために、政府と真剣に建設的に対話することを含む活動を発展させなければなりません。さらに、米州ボリバル代替機構(ALBA)やペトロカリブといった「新しい統合」の国際的な場を利用することも必要です。しかし、政府に期待するだけではなく、食糧主権を民衆や先住民などの運動によって底辺から確立しなければなりません。今こそ食糧主権の時であり、私たちはすべての国で前進するためにイニシアチブを発揮する必要があります。私たち世界中の小農民と家族農業者は、世界と私たちの家族やコミュニティーに安全で入手しやすい食糧を提供することができるのです。
私たち小農民と家族農業者だけでは、尊厳を求め、公正な食糧・農業システムを求めるたたかいに勝利し、もう一つの世界を実現することはできません。私たちは、展望を共有する運動組織との組織的・戦略的連合を確立し、強化しなければなりません。ビア・カンペシーナ第5回総会(08年11月)は、このことを特別に重視しました。
この4年間、ビア・カンペシーナはWTOに反対する運動で中心的な役割を担ってきました。農民連はビア・カンペシーナ加盟組織として、香港でのWTO対抗行動や北海道でのG8サミット反対大行動、バリでの気候変動会議など、多くの場面で多大な貢献をしてきました。
農村で支配的なモデルは、青年に選択肢をいっさい与えていません。青年は現在と未来の土台であり、私たちのたたかいのすべてのレベルで、青年の団結と創造的参加を進めなければなりません。
国際的社会運動体としての私たちの一番の強さは、異なる文化や考え方を一つの運動体として統一する力です。ビア・カンペシーナは、生活と小農民・家族経営による農業を守るために抵抗し、たたかうという共通の立場を代表しています。私たちは食糧と農業を守り、食糧主権と尊厳、生活の権利を守るために行動します。私たちは農民と農村の住民であり、社会から消し去られることを断固として拒否します。
農民連の兄弟・姉妹のみなさん、私たちはみなさんの運動が大成功をおさめ、私たちのたたかいが大勝利をおさめることを希望します。
たたかいをグローバル化しよう! 希望をグローバル化しよう!
(新聞「農民」2009.1.19付)
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