「農民」記事データベース20090105-859-01

ひょう害に負けないぞ

気落ちしたりんご農家励ます
ほほえみ産直 青森・津軽農民組合

 リンゴの主産地、青森県津軽地方は2008年、春の霜害、夏から秋にかけてのひょう害、晩秋の雪害など、度重なる天災に見舞われました。幼果が落ちたり、育った果実も傷がついて市場で値がつかないなどの被害が出ています。一部地域は壊滅的被害で、1991年の台風19号を上回る打撃といわれます。

 津軽農民組合「ほほえみ産直部」(小山恵司部長)は、外見は傷ついても食べればおいしいリンゴをなんとか消費者に届け、組合員の生活を守ろうと奮闘しています。

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“見た目は悪いが味はおいしい”

被害リンゴ 売り先開拓に奔走

 すぐに届いた消費者の反応

 根本から幹が裂けたリンゴの木。弘前市の高橋渡さん(49)の果樹園に痛々しい光景が広がります。収穫を終えたばかりの11月中旬に40センチも積もる雪が降り、まだ葉を着けた木はその重さに耐えきれず、枝や幹が折れる被害が続出したのです。出荷作業に追われ、畑の片付けに手が回らない高橋さんは、「どれだけの被害なのか、まだわからない」と苦笑します。

 建設関係の職人だった高橋さんは、昨年の春お父さんを亡くし、リンゴ栽培を継いだばかり。しかし、その直後から試練が待っていました。

 「父の葬儀が開花の時期。ちょうどそのころに霜にやられ、4割くらいの畑で花が落ちました」。

 実のなったところでも、果皮がガサガサに荒れる“サビ”といわれる現象が多発しました。「売り物にならないのでは」と不安になった高橋さんは、近所の組合員から聞いていた「ほほえみ産直」に参加してみようと考えます。「最初はほんの少しの申し込みだったのよね」と、農民組合事務局の千葉厚子さんが振り返るように、「お試し」のような出荷でした。

“心配するな”と、心強い消費者の声

 ところが、高橋さんのリンゴを食べた沖縄県の消費者から、「おいしかった」という手紙にその人が書いた本のプレゼントも添えられて、さっそく追加の注文が届いたのです。うれしい反応に励まされた高橋さんは、「ほほえみ産直」への確信を深めます。早生の“つがる”は20箱(1箱は20キロ弱)ほどの出荷でしたが、主力の“ふじ”は「700箱くらいになりそう」と見込みます。

 農業の厳しさを思い知らされた1年目。それでも「農民組合の仲間たちとともにリンゴづくりを続けていこう」と、高橋さんは決意しています。

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元気な笑顔の「ほほえみ産直部」のみなさん。後方は岩木山

 台風支援の連帯いまも生きる

 「ほほえみ産直」は1989年、20人足らずでスタートしました。凍霜害や台風で傷ついたリンゴは加工用などにされ、20キロで200〜300円にしかならず、生産費が償えません。“良品”でなくてもおいしいリンゴを、なんとか消費者に食べてもらいたいとの思いでした。

 ところがその翌々年(1991年)、台風19号が津軽地方を直撃。出荷目前のリンゴが9割も落果する被害で、自殺者も出ました。農民組合は、農家を励まそうと、落果リンゴの産直に取り組みました。救援産直とはいえ、木から落ちたりんごを売るなどどこもやったことがありませんでしたが、農民連や労働組合などからの大きな支援を受け、12万ケース(10キロ換算)を出荷。産直の輪は全国に広がりました。

 その後、「ほほえみ産直」の仲間も少しずつ増え、最近は年に1万5000ケースほどを出荷してきました。しかし、たびたびの降ひょうで多くの果実が傷ついた昨年は、新しい仲間が一度に14人加わり、出荷希望も大幅に増加。91年のような取り組みが必要になっています。

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雪害で折れた木を見つめる高橋さん

 期待裏切らないリンゴをつくる

 ほほえみ産直副部長の中沢義人さん(40)は、小山部長(49)らと二度にわたって上京。食健連に加わる労組などを回り、支援を訴えました。

 「春に霜にやられたときは『今年はダメか』とショックを受けたのですが、仲間の畑を見たらもっとひどい。落ち込んでいる場合ではないと思ってがんばりました」。

 東京では多くの訪問先で「台風19号のときに大量に注文した実績がある。心配するな」と励まされたそうです。津軽に帰ってそのことを報告すると、シュンとしていた仲間も元気になったといいます。

 中沢さんは、「期待を裏切らないおいしいリンゴを出荷したい」と気持ちを引き締めます。小山部長も「昨年は若い仲間をたくさん迎えることができたが、出荷先に困っている農家はもっといるはず。この困難を乗り越えることが、必ず農民組合を大きくする力にもなる」と、未来を見すえています。

 ほほえみリンゴの注文は、津軽農民組合へ
 TEL 0172(37)0141


農民連第18回定期大会のご案内

1月20日(火)午後1時30分〜22日(木)正午
会場 東京・「大田区産業プラザ」

(京浜急行「京急蒲田駅」徒歩2分、JR京浜東北線「蒲田駅」徒歩12分)

  *1日目の夜に「20周年記念レセプション」を開催

(新聞「農民」2009.1.5・12付)
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2009年1月

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