どうなっているの? 日本の水産業 =8=
漁獲量減少で加工原料不足
漁獲量の3分の2が加工品に
水産物には多くの加工品があります。それは原料が多種多様なことと、余剰物の工夫から生まれました。カマボコに代表される練り製品、エビのむき身や魚の切り身などの冷凍食品、スルメや煮干しに代表される乾燥品、サケ・マスなどの塩蔵品、削り節、くん製など、およそ6種に分けられます。これらの生産量は年間200万トン前後ですが、ほかに冷凍した生鮮水産物や飼肥料、魚油などを合わせると、実に漁獲量の3分の2は加工品として消費されています。
これらを生産している経営体は、全国に1万余りありますが、練り製品やのり、缶詰製造の一部の会社を除けば、ほとんどが零細で家内工業的な経営体です。これら加工産業の最大の問題点は、国内漁獲量の減少による原料不足ですが、アジ干物の加工業を例にその実態を紹介します。
高い原料価格に加工業者は悲鳴
図のように、1978年から80年の3年間に、マアジの漁獲量
が一気に前年の半分もしくは3分の1に減少しています。不思議なことに、この間、干物の生産量
は5万トン台を維持しほとんど減っていません。これでは、漁獲されたマアジのほとんどが干物になったことになります。一方、マアジの輸入量
は89年には5万5千トンです。
干物業者(静岡県沼津市)の証言では「この3年間、マアジ原料はキロあたり1000円したものを使っていた」そうです。一般には百円以下ですから、実に10倍の価格です。この状態が3年間も続いたので、さすがに干物業者は悲鳴をあげ、ついに世界中のアジ資源を調査し、干物原料に使えるかどうか検討したそうです。そして、ヨーロッパのマアジがどうにか使えることが判明し、イギリスのまき網業者に漁獲してもらい、輸入することにしたそうです。その干物業者は「資源の状況も考えず、無計画に乱獲する日本の漁業者とは相棒になりたくない」と話していました。その後、マサバについても同様なことが起こりましたが、マアジよりもさらに深刻で、太平洋北部のマサバ資源は壊滅的になり、15万トンも輸入することになってしまいました。
国内漁業と加工業との調整不足
200カイリ体制の影響もありますが、国内の漁業と加工業との調整不足は、このようにいびつな食料生産体制に移行してしまいました。このことによって、干物業者は生き残りましたが、干物原料として利用されないマアジ価格は暴落し、多くの沿岸まき網・棒受け網業者は廃業せざるをえなくなりました。
(21世紀の水産を考える会 山本浩一)
(つづく)
(新聞「農民」2008.12.22付)
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