輸入飼料に頼らず国産活用を超多収飼料米で畜産と水田救おう食料自給率向上にひと役
高騰を続ける輸入飼料に頼らず、「超多収飼料米」を家畜飼料に活用して、食料自給率をあげようという取り組みが始まっています。
続々と新品種「減反水田、遊休水田も含めて日本のすべての水田をコメ生産に利用すれば、現在、ほぼ全量 をアメリカからの輸入に依存している飼料用トウモロコシの75%、金額にすれば4500億円分を国産の飼料米で代替できる」と強調するのは、東京農業大学畜産マネジメント研究室の信岡誠治准教授。信岡さんは、近年、続々と新品種が開発されている飼料用稲「超多収飼料米」の普及に力を注いでいます。 信岡さんらが開発している「超多収飼料米」は、通常の主食用稲の約2倍、10アールあたり1トン以上(モミ米)の収量が上がる“超多収”品種。徹底した“低コスト生産”が可能というのも重要な開発ポイントで、(1)多収には大量の施肥(10アールあたり28キログラムの窒素成分量)が必要だが、たい肥を大量投入(10アールあたり3トン)しても倒伏しない、(2)簡単な水管理、(3)モミ水分量を15%以下に乾燥させてから収穫することで乾燥調製作業も省略、(4)イモチ病などの病害虫に強く、農薬散布も省略できる、などの大きな利点があります。
栄養分も良好家畜の飼料としても優秀です。与えるのは主にモミの部分で、牛にはモミのまま、もしくは圧ぺんしたものを、豚には粉砕で、養鶏はモミのまま与えます。信岡さんが採卵鶏に給与した研究では、産卵率は8カ月連続で95%以上をキープし、殻の固さ、食品としての栄養分も非常に良好です。飼料米で育てた卵や豚肉を扱う生協では、食料自給率や日本の農業を守り育てることなどの学習・宣伝に積極的に取り組んでいることもあって、少々高めの価格にもかかわらず、組合員からの注文が殺到。食味テストでも非常に好評を博しているなど、消費者からの飼料米への支持もとても大きいものがあります。
政策的支援を飼料米の普及の課題の一つとなるのは、飼料として使用可能な価格と、栽培農家が作り続けられる価格(少なくとも10アールあたり10万円)とを、それぞれどうやって実現していくかという点です。信岡さんは、「反収増加と稲ワラ活用によって農家所得を確保すると同時に、やはり政策的な支援が必要。農業政策を根幹から転換して、飼料米を麦や大豆と同様に重要品目に位置づけるべき」と強調します。このほか、現在は牛限定となっている「耕畜連携水田活用対策事業」を全畜種に拡大することや、種モミの確保、倉庫や流通体制の確立、稲作農家と畜産農家の連携など、課題は山積みですが、普及すれば、水田を水田として活用でき、食料自給率も向上できる“大増産プロジェクト”として大きな期待が寄せられています。
“畜産大パニック”シンポ開く飼料米を推進している生協や農協、消費者、畜産農民全国協議会会長の森島倫生さんなどが呼びかけ、11月28日に東京都内で「超多収飼料米が畜産・大パニックを防ぐ」シンポジウムが開かれ、全国から150人が参加しました。飼料米を生産している庄内みどりの農協や、飼料米を使用した卵、豚肉を扱う生活クラブ生協、東都生協、パルシステム生協連合などが実践事例を紹介。青森県の常盤村養鶏農協専務理事の石澤直士さんは、水田農家と連携して養鶏に飼料米を取り入れている実践を報告し、「農家も減反したくて減反しているのではない。飼料米がもっと普及すれば、輸入飼料の購入に消えていたお金も地元の稲作農家にいく。取り組みをもっと広げよう」と訴えました。 森島さんは「輸入穀物飼料に依存して、多頭化・大型化を進めてきた日本の畜産のあり方や農業政策は本当にこのままでいいのかが、今問われている。飼料高騰は非常に大変だが、今後の畜産のあり方を考え直すいい機会にしたい」と述べ、国産飼料の活用を呼びかけました。
(新聞「農民」2008.12.15付)
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[2008年12月]
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