金融危機とJAバンク
北海道信連が300億円増資へ単位農協への影響甚大農林中金は1兆円以上の増資へ農林中金は08年3月決算で、サブプライムローンが破たんした影響で、1000億円余の損失を計上しました。その後、経営破たんでアメリカ政府に支えられた「政府系」住宅抵当公社2社への5・3兆円にのぼる債券保有も明らかとなり、08年9月期にも1000億円の損失処理を行いました。このため、11月26日付の日本経済新聞によれば、農林中金は今年度中に1兆円以上の増資を行う計画です。これは、今回の金融危機に伴う増資としては、国内金融機関で最高額となります。
外国証券296億円などの損失一方、北海道信連は07年度決算で、290億円の当期損失を出しました。決算資料によると、07年度末現在で貸出金を上回る有価証券運用を行っており、保有している有価証券の評価損は149・7億円にものぼっています。とくに時価が30%以上と著しく低下したものについて減損処理を行ったところ、外国証券の296億円をはじめ総額で299億円、そのほか有価証券の売却損も35億円あり、その結果290億円の当期損失となったということです。このため同信連では、会員の単位農協に対して300億円の増資を呼びかけ、その調達は、信連への預け金から引き落とす方法で行われるといわれています。
一層貸ししぶり貸しはがし強化農協の3段階(単位農協―信連―農林中金)の間では、信用事業における余裕金運用に規制が行われています。かつては、農水省が定めた財務処理基準令によって行われていた運用規制は、現在、模範定款例によって実施されています。単位農協に対しては、農協模範定款例(出資組合)で、「余裕金の3分の2以上を信連又は農林中金に預けなければならない」(第66条の4)と義務づけられ、信連は「余裕金の2分の1以上を農林中金に預けなければならない」(信用農協連合会模範定款例の第63条)とされています。こうして農協系統信用事業では、単位農協と信連での自由な資金運用が制限されており、義務づけのなかで集められた資金が、組合員や会員のための必要資金として使われるのではなく、高率配当(ハイリターン)をねらった投機的(ハイリスク)な運用に活用されており、それがアメリカ発の金融危機によって大きな損失を生じることになりました。 こうした系統信用事業の現状からは、今後、これまで以上にますます組合員農家への「貸ししぶり・貸しはがし」が強められることが予想されます。 (Y・H)
(新聞「農民」2008.12.15付)
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[2008年12月]
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