「農民」記事データベース20081215-857-02

都市農業の新たな可能性探る

東京の農民連と食健連がシンポ

関連/非遺伝子組み換え原料は豊富


画像 東京農民連と東京食健連は11月29日、都内でシンポジウム「消えてもいいの!? 東京の農業」を開き、生産者、消費者、研究者らが参加しました。

 東京農民連の田中山五郎会長が「東京から農地が失われることを憂慮している。都市農業が続けられるよう多くの人から意見を求めたい」と開会あいさつしました。

 武蔵大学の後藤光蔵教授が、都市農業の現状や展望などについて基調講演。東京の多くの農家が直売や環境保全型農業に取り組み、後継者がいる戸数の割合も他の道府県に比べて高い状況を示し、「農家と都市住民が協力して都市農業の新たな可能性を切り開いてきた」と指摘しました。

 一方で、農地面積、農家数ともに減少し、自給率も下がっている実情にあるものの、都市農業・農地の位置付けが、景観・環境保全、街づくりの一環としての取り組みに変わってきていることを強調しました。

 最後に、都市農業が、安心・安全な農産物の供給、環境にやさしい農業などに取り組みながら、「都市と農業・農地との共生をめざすべきだ」と呼びかけました。

 生産現場から、清瀬市の野菜生産者で多摩農産物供給センター代表の小寺理一さんと町田市の酪農家、北島一夫さんが発言。小寺さんは、相続税が高い宅地並み課税制度によって、3度の相続で農家はなくなる困難な現状を示し、「自ら施設園芸によるエコ栽培に取り組み、直売所や庭先販売など販路の確保を模索している」と語りました。

 北島さんは、飼料高騰で、搾れば搾るほど赤字になっている現状を述べたうえで、自ら運営する牛乳工場でヨーグルトやアイスクリームを作るなど、消費者に東京農業の重要性を知ってもらう努力を紹介しました。

 消費者の立場から、新日本婦人の会東京都本部の森崎証子さんが報告。全国で取り組んだスーパーマーケット調査で、輸入食品が店頭の多数を占めた結果を発表し、「安全な食料と住み続けられる地球のために、農民連との産直を進めたい」と発言しました。

 都庁職員の労働組合、都庁職経済支部の斉藤修二さんは、東京農業の現状を説明。アシタバ、コマツナなど都内産農産物の取扱量が市場で多く、体験農業などによって、都民の農業への理解も進んでいる実態を紹介。さらにヒートアイランドの緩和、防災・教育・癒しなど畑の持つ多面的な機能について説明しました。

 最後に、東京食健連の滝澤昭義代表世話人が「都市農業を守ることは都民の生活を守ることだ」と閉会あいさつをしました。


非遺伝子組み換え原料は豊富

グリーンピース・ジャパン フォーラム開く

 国際環境NGOのグリーンピース・ジャパンは11月26日、都内で非遺伝子組み換え(非GM)原料の現状と日本市場への供給可能性をさぐるフォーラム「GMO-FREEは今後最大のビジネスチャンス」を開催し、食品会社をはじめ、消費者、畜産業者らが参加しました。

 食品・飼料原料に“遺伝子組み換えでない(GMO-FREE)”との認証を行っているサート・アイディ(Cert ID)ブラジル社のアグスト・フレイレ社長が、非GM原料供給の状況やGM原料との価格差について講演しました。

 フレイレ氏は、ブラジルのGM大豆の現状にふれ、除草剤の成分グリホサートが高額なため、大豆農家が非GM大豆の栽培に戻っていることを指摘。非GM食品にかかるコストはGM食品よりもわずかな負担で済む、とのスイスの農業団体による試算を示し、「非GMを扱う生産者団体や企業も年々増えている。非GM原料は求めれば豊富にある」と訴えました。

 有機農産物の流通をめざすマザーズグループにんじんの伊勢戸由紀社長は、GM食品にたいする不安が続出した会員向け意識調査の結果を紹介しました。

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非遺伝子組み換え原料をアピールするフレイレ氏

 NPO法人日本消費者連盟の天笠啓祐副代表は、GM食品・作物の現状を報告。「世界のGM作物の面 積は拡大しているものの、アメリカが過半数を占め、栽培国は増えていない。種類はトウモロコシ、大豆、ナタネ、綿に限られ、性質も除草剤耐性、殺虫性だけで、ほかには広がっていない」と述べました。日本での開発実験はほとんど失敗し、収量 の減少、農薬使用量の増加など農家にはメリットがない実態を示し、「国内では、自治体独自のGM作物規制条例や指針が広がっている。世界でもGMフリーゾーンが拡大している」と強調しました。

 グリーンピーズ・ジャパンの星川淳事務局長は「非GM食品がもっと増えるよう、企業と意見交換を深めていきたい」と閉会あいさつしました。

 参加した岐阜県の養豚業者は「えさに非GMを使っていることから不安を感じていました。きょうの話を聞いて、きちんと対応していけば非GMにこだわって続けられる展望が持てました」と話していました。

(新聞「農民」2008.12.15付)
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2008年12月

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