農民連が全農と懇談
有意義な意見交換
「いま、『農』と名の付く団体が食料自給率の向上にむけて力をあわせることが、大事になっている。忌憚(きたん)なく話し合いたい」―農民連の白石淳一会長をはじめ本部役員は、東京・大手町にある全農(全国農業協同組合連合会)を訪れ、親しく懇談しました。
いま日本農業は危機的状況
再生へ向け互いに協力を
農民連からの呼びかけで実現
懇談は、「国際的な穀物相場の高騰、続発する食の安全を脅かす事件など、食と農の問題がクローズアップされ、農政が鋭く問われているなかで、食料自給率を抜本的に向上させることが危急の課題」と、農民連からの呼びかけで実現したもの。懇談は「農民連さんのおっしゃるとおり」などの発言も出され、笑いも起こるなど和やかな雰囲気で有意義な意見交換の場となりました。
全農の出席者は、農政担当専任部長の香川法男さんや米穀部次長の五十嵐和司さん、畜産総合対策部次長の守江寛さんら。
はじめに、農民連の笹渡義夫事務局長が「汚染米の全容解明と再発防止」や「乳価引き上げ、飼料高騰対策」に向けた国への要請など、この間の農民連の活動を紹介し、「需要がないミニマム・アクセス(MA)米を義務と言って輸入し、倉庫に積んでおくことは許されない。WTO交渉も金融危機を口実に急きょ開かれようとしており、緊迫した情勢だ」と、話題を投げかけました。
農業をめぐって潮目が変わった
これに対して、全農の五十嵐さんは、「農業をめぐって潮目が変わった」と切り出し、「MA米のうち10万トンは主食用として輸入されているわけだから、国内の生産に影響がでないとはいえない」と、全中(全国農業協同組合中央会)が政府に要請したことを紹介(申し入れ文は別項)。「こうした状況のなかで、食料自給率の向上に向けて、水田をいかに活用するか。いま、飼料米と米粉に取り組んでいるが、採算ベースにはなっていない。需要があるわけだから、思い切った国の支援がどうしても必要だ」と述べ、「汚染米事件で国産の農産物を見直す動きが進んでいる。これをチャンスに、生産費をどうやって保障し作り続けてもらうか。国内農業を守っていくために、どういう政策を作っていくのか。いま、このことが真剣に問われている」と指摘しました。
農民連ふるさとネットワークの横山昭三事務局次長が激安米に混入されているクズ米の話をすると、全農の香川さんは「食の業界で、もうけるためにはなにをやってもいいんだ、ばれなきゃいいだろう、安ければ安いほどいいんだというモラルでいいのか」と批判しました。
飼料代、円高還元で大幅値下げ
また、全農の守江さんは「飼料米を作るのはわけないが、乾燥代や倉庫保管をどうするのかといった課題もどんどんでてきた。反10万円はほしいが、農水省の予算は2兆円でその半分は公共事業。こんなちっぽけな予算ではやれない。結局は政治力につきる。農民連さんといっしょに、私たちも政治力をつけていかなければならない」と述べました。また来年1〜3月期の飼料代は、円高還元で大幅に値下げすると表明しました。
最後に、今後もこうした意見交換の場を設けていくことを確認して懇談を終わりました。
全中のMA米に関する申し入れ(大要)
MA米汚染米等が食用に転売され不正規流通が行われていたことは、MA米の導入により国内需給に影響を与えないという政府の基本方針が遵守されていなかったことであり、きわめて重大な問題である。
米の需要量が年々減少し、国内で生産調整が強化される中で、MA米を義務的に輸入することは理不尽であり、納得できない。さらに、WTO交渉でMA米輸入の大幅拡大が求められている状況とあわせ、生産者は強い怒りと懸念を持たざるを得ない。
○現行のMA米輸入枠は、縮減をめざし粘り強い交渉を行うこと。WTO交渉の議長案は断じて受け入れられず、徹底した交渉を行うこと。
○MA米は義務的輸入とする政府統一見解とWTO農業協定との関係を改めて見直し、国民が納得できるMA米輸入の運用を行うこと。
(以下、略)
(新聞「農民」2008.12.15付)
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