世界的な食糧危機状況のもと
WTO協定にどう対処するのか
東北農民運動交流集会での 愛媛大学特命教授・村田武さんの講演
いま問題なのは、世界の穀物が過剰からひっ迫に転換するなかで、WTO農業協定にどう対処するのかということです。日本の外交は、工業製品の輸出では途上国に市場開放させたいけれども、米・農畜産物は守りたい。これでは股さき状態です。財界をおさえこんで、工業製品も途上国に無理難題を押しつけない、そして日本農業を守るという外交にシフトしなければなりません。
ドーハ・ラウンドは、輸出国主導で決着をめざしているので、もめているわけです。7月の交渉では、インドが最後まで抵抗してがんばりました。その理由は、農産物の輸入が増えたら、国内農業が持たなくなるから「緊急セーフガード」をやらしてほしいと要望しましたが、アメリカとEUはその発動要件をめちゃくちゃ高くしました。インドの農村では、5年間で10万人ともいうものすごい自殺者がでています。だから、ついに合意しなかったわけです。もし合意したら、日本はたいへんなことになります。ミニマムアクセス米の輸入を100万トン以上も認めることになるからです。日本は、穀物の国際価格が上がるなかで生産国が輸出規制を強化しないよう求めています。これは各国に食糧主権の放棄を求めることであり、国際社会の正義に反することです。
いま食糧主権の運動の先頭に立っているのが、農民連も加盟するビア・カンペシーナです。そして冷凍ギョーザ事件や汚染米などで、内閣府の世論調査では「少し高くても国内で」という国民が94パーセントに達しています。こうしたチャンスを活かして、食料自給率を高めていく運動にしていく必要があります。
(新聞「農民」2008.12.8付)
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