どうなっているの? 日本の水産業 =7=
漁港の整備進まず崩壊寸前生産の土台である漁港にもさまざまな問題が起こっています。その根源は水産業の国際化・200カイリ体制の登場です。
漁獲量減少から漁師も船も減るいま日本の沿岸には約2900カ所の漁港があり、表のように、漁港法によって第1種から第4種まで指定されています。これらの漁港は戦後の食糧難解消を目的に、1962年以来、漁業構造改善事業により毎年1500億円以上の経費が投入され、港や堤防などが整備されてきました。そのため、水産関係予算の8割が公共事業という変則的な時代もありました。このようにして全国津々浦々の漁港が整備され、海外への進出も進み、漁業生産量は1963年の670万トンから1988年には1278万トンへと倍加しました。ところが1990年代入ると、漁獲過剰の影響や海洋環境の悪化による魚資源の減少、そして世界的な200カイリ体制の確定から、遠洋・沖合漁業の衰退が始まりました。このため漁獲量は2006年には570万トンへと1960年代と同じ量まで減少。その上、漁業就業者数も1963年の63万人から2006年には21万人へと1/3に減少し、“漁港あれども魚が見えない、漁師がいない、船はレジャー船ばかり”と大きな矛盾を生み出しました。
国直轄の13港だけ大々的に整備このような時代の変化をうけて、水産庁は2001年に国際化対応政策として水産基本法を改定しました。この中で漁港については、漁場―流通 ―加工―販売等の一貫した大規模な整備、環境との調和や民間活力の導入などの方針をあげています。しかし、漁港の管理者は表のようにほとんどが市町村です。補助金による整備といっても、市町村や漁協の負担分もあり、現状の財政ではその整備もかなり困難で、ここ数年、どの港も補修や整備は進まず、わずかに台風など災害復旧が行われている程度です。国は、直轄の特定第3種漁港(13港)を水産物の輸出入の主要港として大々的に整備し、国内生産物の流通 を再編しようとしています。しかし、海の施設は塩害で疲弊し、港の中は海砂がたい積するなど、30年で使いものにならなくなります。離島を含め2000カ所以上の漁港は、今後どうなるのでしょうか。 地域経済の崩壊が、海からも始まっているのです。 (21世紀の水産を考える会 山本浩一) (つづく)
(新聞「農民」2008.12.1付)
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[2008年12月]
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