バイオ燃料政策の転換を
FAO上級経済専門家 デービッド・ダーウ氏の講演
FAO(国連食糧農業機関)は10月、バイオ燃料に対する政策や補助金の見直しを求める報告書を発表しました。農林水産政策研究所は11月10日、来日中のFAO農業セクター開発課上級経済専門家のデービッド・ダーウ氏を招き、「バイオ燃料・可能性、リスク及び機会」のテーマでセミナーを開きました。ダーウ氏の講演の要旨を紹介します。
さらに長期にふえる
農産物を原料とするバイオ燃料の生産は2000年から07年の間に3倍に増え、液体バイオ燃料(エタノールとバイオディーゼル)の農産物原料(サトウキビ、トウモロコシ、油糧種子)に対する需要は、これからの10年間、さらには長期的にも増加し続け、食料価格上昇への圧力となります。
各国政府は、バイオ燃料政策を(1)エネルギー安全保障(2)気候変動の緩和(3)農業支援などの目的で推進し、補助金、優遇税制などの助成策を講じています。
大きな役割果たせず
バイオ燃料の生産は、必ずしも利益があがるわけではありません。その利益は原油・トウモロコシ価格に左右され、競争も激しいのが現状です。生産コストも高く、例外なのは、ブラジルのサトウキビを原料とした燃料ぐらいです。
石油、石炭、ガソリンなどに比べて、バイオ燃料がエネルギーに与えるインパクトも限定的で、大きな役割を果たせない状況です。
以前考えられていた温室効果ガスの削減効果も限定され、サトウキビや非食用の第2世代バイオ燃料によるCO2削減量は多いものの、ナタネ、トウモロコシは少なくなっています。
さらに、バイオ燃料用農産物の需要に応えるために森林を伐採するような土地利用の変化は、生物多様性や温室効果ガス排出削減にとって大きな脅威となります。
貧困や食料不安にも
穀物価格は徐々に下がりつつありますが、価格高騰のさまざまな要因の一つがバイオ燃料です。
食料価格高騰の最大の被害者は、貧困層です。それは、収入に占める食料への支出が大きいからです。さらに土地を持たない農民や農村世帯、女性が世帯主の世帯にも大きな打撃を与えます。今後、貧困や食料不安を防ぎ、農業や農村開発への投資を行うことが求められます。
さらに、環境の持続可能性を確実なものにし、現在のバイオ燃料政策を見直して、農業、食料、環境などの国際的な政策の調整を進めることが必要です。
(新聞「農民」2008.11.24付)
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