どうなっているの? 日本の水産業 =6=
多くの制約をもつ魚市場
大規模な製氷所や冷蔵庫が必要
日本の各地に水揚げされた魚は、産地市場を通じて都市部の消費地市場に運ばれます。これは農産物も同様ですが、魚の流通は農産物より鮮度低下がはやいので、大規模な製氷所や冷蔵庫が必要です。さらにすばやく値段を決め小分けして輸送するため、作業スペースやトラック便配送所も必要です。また、1年を通じて50〜100種の魚を取り扱うため、零細な個人企業や中小企業がほとんどで、漁獲予測がつけにくいため生産計画が難しく、海に接して立地しなければならないなど、農産物市場とは異なった多くの制約があります。
生産量の減少と施設の不衛生さ
現在、国内には産地魚市場が911カ所あり、そのうち83%が漁協系統です。その平均取扱高は約10億円で、ほとんどが小規模な市場です。いま、この市場に大きな問題が起こっています。
その一つが国内生産量の減少です。特に、遠洋・沖合漁業の生産量の減少は、表のように10年前の50〜60%で、すべての市場の運営経費を直撃しています。その上、零細な地方の市場から大都市部に近い市場に魚が集中し、地方の市場ではより一層取扱量が減少しています。
もう一つの大きな問題は、市場施設の衛生問題です。
かつて、東北地方のホタテ貝がヨーロッパに輸出できなくなったことがありますが、輸入量が350万トンにもなり輸出量も増大する中で、衛生管理がいっそう厳しくなります。特にEUでは、市場は外気と遮断した体育館のような構造で、車と人と魚の場所は区別され、市場内は一定の温度に冷房されています。
一方日本では、いまも外気とはオープンであり、直射日光や夏場の熱気は入り放題。魚はコンクリートの土間に並べられ、その上を海水が流れるなど、ヨーロッパの人たちから見れば“不衛生”な状態です。施設の改修には膨大な経費がかかりますが、国際的な流通システムに合わさざるをえなくなっています。
生産第一主義の弊害も起こって
3000カ所の漁港と1000カ所の市場を全国に設置してきた生産第一主義の行政施策を、今後どう改善させていくのか。いま起こっている食品の安全性や不当表示など多くの事件は、この生産第一主義の弊害でもあります。確かに「構造改革」の時代ですが、何を基本にしていくのか。その姿勢が問われています。
(21世紀水産を考える会 山本浩一)
(つづく)
(新聞「農民」2008.11.17付)
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