メラミン混入の背景と
中国酪農の問題点(下)
北大名誉教授 大久保正彦さんに聞く
配合飼料にメラミン混入
消費量多い地域で“集乳合戦”が
――集乳合戦とは、どういうことですか。
牛乳の消費量が多い北京とか上海などの都市部に近いところで、激しく行われたようです。牛乳は全粉加工したものを還元した「牛乳」が飲まれていましたが、現在はLL牛乳になっています。最近はヨーグルトの消費も増えていますが、乳製品のほとんどは飲用です。
メラミン混入で問題となった河北省の三鹿集団は、中国乳業の4番手の企業ですが、都市部に近いところにあることから、工場の稼働を引き上げるために集乳をあせったと思われます。
7割が配合飼料価格上昇で大変
――エサにもメラミンが混入して、問題となっていますが。
中国での1頭あたりの生乳の日量は15キロくらいですが、配合飼料を7キロ弱も与えています。まさしく配合飼料で搾っているという実態です。配合の中身は、トウモロコシやフスマ、大豆カスで、自給しているとは言え穀物不足に拍車をかけています。
そのために配合飼料の国内価格も上昇し、農家は大変です。そこで、タンパクを上げるためにメラミンが使われていたのではないかと思います。
牧草の生産では、最近になってようやくデントコーンやアルファルファを作り始めていますが、自然草の乾草がほとんどです。また草地がないため、家畜を自然地に放牧するのですが、自然草地が著しく破壊され放牧禁止地も増加しています。そのために、国家は補助金を出していますが、そのお金は配合飼料に向けられ、配合飼料に依存する割合が高まっている実態にあります。私は、その自然草地の保護の仕事をJICA(国際協力機構)から依頼されています。
農家の知らないところで起きた
中国の人口は13億人を超えていますが、約10億人は農村部で暮らしています。農家の知らないところで起きたメラミンの問題で、農家自身が苦しんでいるのが実態です。
(おわり)
(新聞「農民」2008.11.17付)
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