「農民」記事データベース20081117-853-06

米・住宅貸付機関に5兆3000億円投入

農林中金は回収できるのか


 突出する農林中金の貸付額

 農林水産業の協同組合金融機関である農林中央金庫が、アメリカを震源とする金融危機のなかで、大きな影響をうけています。サブプライムローン関連の約5000億円の証券のほかに、アメリカの住宅貸し付けの8割を占めるフレディーマック、ファニーメイという住宅抵当会社2社が発行した債券を、5兆3000億円も保有していることが明らかになりました。

(表)主要国内金融機関によるアメリカ住宅
   抵当公社債券保有状況(08年6月現在)
農林中金
5兆3,000億円
日本生命
2兆9,000億円
三菱UFJ
2兆8,500億円
第一生命
1兆3,000億円
中央三井
7,718億円
三井住友
4,308億円
みずほ
1,750億円
あおぞら
943億円
三井生命
894億円
明治安田生命
874億円
損保ジャパン
744億円
東京海上
632億円
三井住友海上
440億円
(注)日経新聞08年9月12日付から

 報道されている内容でみると、両社が住宅貸し付けを担保にして発行した債券総額は530兆円。このうち160兆円を諸外国が保有し、日本の金融機関が保有している債権は23兆円。そのトップが農林中央金庫で、突出して大きな金額になっています。

 有価証券運用海外が72%も

 農林中金の07年度決算書を見ると、県信連などからの預り金39兆円を含む58兆円の吸収資金に対して、運用資金は61兆円。そのうち有価証券運用が36兆円と全体の59%を占めています。そのなかの72%を占める26兆円が、外国債券など海外での証券運用となっています。また、預り金に対する有価証券の割合は国内部門が92%に対して、国際部門では564%と異常な数字となっています。その海外運用関係での時価評価で見ると、07年度末で1兆2500億円の評価損(評価益を差し引いても6000億円の損失)を計上。

 11月6日に公表された9月末の中間決算でも、計上利益が前年同期比で87%減となっています。

 日本では、フレディーマックとファニーメイの2社はアメリカの政府系金融機関といわれ、公的資金による救済も行われていることから、「国債に準じる安全な運用先」と説明されています。しかし、実際は国営企業でも公共企業体でもない民間企業にすぎません。

 協同組合金融の正道に戻れ

 3月決算で1000億円の損失を計上したサブプライムローン関係とともに、この住宅貸し付けを担保にした債権でも全額補償の見通しはなく、農林中金は、最悪2割しか回収できないのではないかと言われています。

 農林中金は、国内では「身ぎれい(農協)合併推進」の方針のもとに、負債をクリアするため「牛を売ってでも返済せよ」と農家をおどし、それでも不足する場合にはすべての農家組合員に出資金の減資を強制しています。いまこそ狂気に満ちた投機的運用から正気を取り戻し、協同組合金融の正道に戻るべきでしょう。

(やまもと)

(新聞「農民」2008.11.17付)
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2008年11月

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