「農民」記事データベース20081110-852-08

メラミン混入の背景と
   中国酪農の問題点(中)

北大名誉教授 大久保正彦さんに聞く


メラミンの存在知らぬ農家も

 ブローカー的な搾乳ステーション

 ――搾乳ステーションというのは、どういう施設ですか。

 北海道に以前あったクーラーステーションのようなもので、生乳を集めるところです。この施設にはさまざまな形態があって、大規模経営や酪農団地のものだったり、乳業メーカーのものなどがあります。

 しかし、個人的な施設が多くあり、農家から生乳を買い入れ乳業に販売するブローカー的な搾乳ステーションとなっています。このブローカー的な搾乳ステーションが大きな問題となっています。

 成分保つためメラミンなどの添加?

 ――それはどういう問題なのですか。

 中国の酪農は急激な生産拡大をしているために、乳業メーカーも多く、日本の明治乳業や森永乳業も進出していますが、乳業全体の稼働率は6割程度で「集乳合戦」が繰り返されました。そのために、乳量をふくらませようと水を加えるということが起きます。すると成分が下がるので、でんぷんや植物油脂を混ぜるのですが、さらにタンパク質が下がらないようにメラミン添加ということになったと思われます。農家は技術が遅れていて、メラミンなどという存在を知りません。

 そこで、ブローカー的な搾乳ステーションが介在し、メラミン樹脂に使われるものがどこからか持ち込まれたと想定されます。まさしく「偽装の進化」と言えるでしょう。

 国家も厳しい規制管理条例を作って調査を始めましたが、その存在があまりにも多すぎるために、再発防止には相当の時間がかかると思われます。

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中国の酪農家の牛舎

 04年に乳幼児毒粉乳事件が発生

 ――メラミンは、以前に問題にはならなかったのですか。

 2004年に、乳幼児の頭がふくらむという「乳幼児毒粉乳事件」がありました。しかし、拡大政策の中でチェックがなされなかったのです。北海道でも何十年もかけて良質な生乳生産を確立しましたが、わずか10年たらずの生産拡大に、技術も飼養管理や衛生管理、流通もついていけなかった。ここに最大の問題があります。

 なかには、乳業メーカーから受け入れを拒否された生乳が、廃棄されずに別の工場に回るなど、「汚染米」のように流通していました。しかし、こうした乳製品は都市部には回らず、農村部に集中することになり、貧困にあえぎ病院にも行けない人たちは深刻な実態にあると思います。

 少し前に「中国の牛乳を飲むと風邪が治る」と言われたことがありますが、抗生物質の混入などへの対応も遅れているそうです。最近はアルコール検査も行われているそうですが、細菌数も非常に高いそうです。

 ただ、黒竜江省では古くから伝えられた放牧民による体験的な飼養スタイルが受け継がれているために、問題は出ていません。

(つづく)

(新聞「農民」2008.11.10付)
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2008年11月

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