「農民」記事データベース20081103-851-09

本の紹介

畑 明郎・田倉直彦編
アジアの土壌汚染


中国の土壌汚染の実態を
調査し、解決策を提言

画像 経済発展めざましい中国。しかし近年、金属鉱山、精錬所や化学工場の排水による水質汚濁、土壌汚染、農産物汚染が深刻化し、各地に「がんの村」が発生しています。また「全耕作面 積の10分の1以上」の農地が、重金属や農薬などに土壌汚染され、食物を通じて人体に健康被害を引き起こしています。その土壌汚染の実態を現地調査し、解決策を提言した本が出版されました。

 編者は、イタイイタイ病をはじめ日本の公害問題を一貫して被害者の立場から研究してきた、大阪市立大学大学院教授で日本環境学会会長の畑明郎さんと、毎日新聞記者の田倉直彦さんです。

 「川の水で農地に毒が入った。作物にも毒がある。でもお金がないから食べるしかない」――中国広東省にある鉄と銅を生産する大宝山鉱山の公害による「がんの村」の農民のルポルタージュは、読む者の胸に迫ってきます。

 このほか、湖南省など中国各地に広がる土壌汚染の実態が、日中両国の第一線の研究者によって報告されています。

 本書では、韓国と台湾の事例にも言及。日本で公害を起こしたアンチモン工場が、韓国でも問題を起こし、中国へと移転するなど「公害輸出」の指摘もあります。

 中国から膨大な食品・農産物を輸入し続けている日本の消費者を震撼(しんかん)させる本です。ぜひご一読ください。

 ▼定価 2100円
 ▼出版社 世界思想社
 ▼四六判 272ページ

(新聞「農民」2008.11.3付)
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2008年11月

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