「農民」記事データベース20081103-851-02

メラミン混入の背景と
   中国酪農の問題点(上)

北大名誉教授 大久保正彦さんに聞く

 中国産の乳製品から有害物質の有機化合物メラミンが検出され、国内でも大きな問題になっています。そこで、最近中国を訪問し、中国酪農に詳しい北海道大学名誉教授の大久保正彦さんに、メラミン混入の背景と中国酪農の問題点を聞きました。
(北海道農民連 野呂光夫)


20年間に生産量が急激に拡大

 生産実態と乳値向上対策を調査

画像  ――今回訪中された目的は、何ですか。

 訪中した時期は、日本でメラミン混入問題が大きく取り上げられる直前の9月上旬でした。

 調査の目的は、牛乳に関していろいろな問題が起きていることから、ある乳業関係の知り合いから頼まれて、酪農家の生産現場の実態と乳質を向上させるための対策を検討することでした。訪問したのは、新疆(しんきょう)ウイグル自治区、内蒙古(モンゴル)自治区などでした。

 ほとんどが小規模経営で手搾り

  ――先生は1980年代から訪中されていますが、中国酪農はどのような経過を歩んできたのでしょうか。

 1978年の「改革開放政策」によって酪農に力を入れ始めました。その当時の生乳生産量は88万トンで自給的なものでした。それが10年間で416万トンに増加、1990年には乳業協会が発足、さらに10年後の2000年には827万トンを生産。この時期から急激な生産拡大が行われ、昨年は3650万トンにもなりました。

 中国には在来種の「黄牛」がありましたが、生乳生産を高めるためにアメリカやカナダから乳牛を輸入して生産拡大を進めてきました。BSE問題が起きてからは、オーストラリアに切りかわっています。

 大規模で近代的な経営もありますが、ほとんどは7、8頭くらいの小規模経営で手搾りです。最近ようやく国産のバケット式ミルカーが出回るようになっています。個々の農家には搾った生乳を冷やすような施設がありません。また、農家が入り組んでいるために、集乳するローリーなどが入っていけないところがあったりします。そこで、搾った生乳を運んだり牛を連れてきて搾乳する「搾乳ステーション」が地域につくられています。

(つづく)


 大久保正彦さん 1938年神奈川県生まれ。北海道大学農学部卒、北海道大学大学院教授。この間、農水省の飼料基準を決める委員や北海道のBSE対策委員などを歴任。

(新聞「農民」2008.11.3付)
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2008年11月

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