どうなっているの? 日本の水産業 =5=
長期化する漁協の危機
経営が大変な農協以上に苦しい
わが国の漁業協同組合は、全部で2515(2004年度末、沿海組合が1476、内水面が878、業種別が161)あります。漁協の大部分は、明治以来の「漁業会」を引き継いで、1948年に漁業協同組合法(現在は、水産業協同組合法)によって制度化されました。日本の各浜にはすべて漁協があり、それを県ごとにまとめ(県漁連)、さらに全国的に組織化(全漁連)されています。
2003年度末の農協と漁協の経営を比較すると、表のように組合員数や職員数、貯金高など、漁協は農協の20から30分の1です。わずかに販売高が5分の1ですが、これは魚市場の取り扱いがあるからです。いま、農協でさえ「経営が大変」と言われていますが、漁協の台所の苦しさは農協以上です。
資源の減少や魚価の低迷が原因
漁協も農協と同様に信用、購買、販売、製氷・冷凍、加工、無線などの事業を行っていますが、収益が上がっているのはわずかに販売事業等であり、そのほかは赤字です。その大きな原因は、漁協が小規模だからです。30億円の販売額がなければ経営は成り立たないと言われていますが、10億円に満たない漁協が全体の約8割にも達しています。統計上は、黒字経営が約5割で赤字は3割ですが、全体の繰越赤字は438億円にものぼっています。さらに実際には、はるかに多くの債務が蓄積していると推定されています。
その原因として、資源の減少や魚価の低迷、消費動向の変化などがあげられますが、大きな原因は何といっても1980年から90年代にかけて輸入が増大し、それによる魚価の低迷です。100%近かった自給率はあっという間に50%前後まで落ち込み、主な漁獲物のアジやサバ、イカの値段がほとんど上がりませんでした。その結果、漁業者の所得は一般勤労者の6割前後に落ち込み、多くの漁業者が浜を去り、その子どもたちは都会へ出て行きました。こうして、毎年1万人の漁業者が減少し、漁協の体力をいっそう弱めました。
零細な基盤克服へ合併進むが…
このような零細な事業基盤を克服するため、全漁連は2007年度末までに、漁協数を250組合まで自主的に合併する方針をたてましたが、その達成率は44%にとどまっています。漁協が抱えている多額の債務が合併を困難にしており、苦難の時代はまだ続くことが予想されます。漁協の持つ各種の事業を解体しなければならない時代が、すぐそこまで来ているようです。
(21世紀の水産を考える会 山本浩一)
(新聞「農民」2008.10.27付)
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