投機マネーと農業・食糧(4)中央大学名誉教授・商学博士 今宮 謙二
投機規制へ世論盛り上げを今回のサブプライムローン危機を契機に生じた資本主義のゆきづまりの原因は、投機マネーの暴走にあることは周知の事実です。「これは投資にすぎない」といくら言っても現実は否定できません。
景気の回復は投機規制しだいむしろ現在、本当の意味での投資が姿を消し、投機が主流になっているところに資本主義の限界があらわれているとみてよいでしょう。従って、現在のこの金融混乱を防ぎ、景気を回復させる第一歩は、投機マネーの規制ができるかどうかにかかっています。10月3日にアメリカで金融安定化法が成立したにもかかわらず、世界的同時株安が生じたことからも、小手先の対策ではなく、根本的な対策、つまり投機規制の必要性がますます明らかになっています。投機マネーの規制については、国際的な話し合いの中で登場しています。たとえば、昨年のドイツ・ハイリゲンダムや今年の洞爺湖サミット、昨年11月の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも話題となりましたが、具体策はまとまらず、先送りされています。これは、EUがヘッジファンドに対する直接規制を提案しているのに対し、アメリカが「金融機関への監督強化でよい」との立場をとり、双方の主張が相いれないためです。
規制の動きにマネー引き揚げこれらの事実から、いまは投機マネーの規制はできないとの悲観的な見方が増えています。しかし、規制は可能です。その理由の一つは、投機マネーを操る企業のもろさにあります。投機は常に大量の資産を借り入れ、巨額な利益を目標に行われますが、こうした企業は、常に世界の流れに注意し、少しでも規制強化などの条件が変われば直ちに投機マネーを引き揚げます。アメリカ議会で今年6月ごろから規制強化案の検討が始まると、原油価格が下落したのもその一つのあらわれです。 いま、アメリカ、ヨーロッパなどさまざまな国際機関で投機規制への検討が行われています。仮に検討案が実行されなくとも、このような議論によって投機マネーを操る企業が警戒し始めます。 二つ目の理由は、投機マネーが農産物などの価格高騰をもたらし、全世界の市民生活を脅かし始めたことです。いますべての市民が投機マネー反対のための大きな行動を行い、「投機マネーを規制せよ」の世論を大きくすれば、規制は可能です。
各国政府が協力国民も監視を規制の内容として(1)ヘッジファンド活動の透明化の徹底(2)農産物など商品市場への投機マネーの流入規制(3)投機マネーへの課税強化などがとりあえず必要です。そのためにも、各国政府が協力できるよう国民の監視が重要です。いずれにせよ金融の混乱が激しくなっており、主要国の政府も何らかの対策をたてる必要に迫られています。(おわり)
(新聞「農民」2008.10.20付)
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[2008年10月]
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