「農民」記事データベース20081020-849-03

エクアドル 新憲法に食糧主権明記

食糧主権は世界の流れ


 南米エクアドルで9月28日、新自由主義と対米従属からの脱却を掲げる新憲法草案の是非を問う国民投票が行われ、賛成64%、反対28%の圧倒的多数で承認されました。

 新憲法は、国による市場管理の強化、不安定雇用の原則禁止、教育と医療の無償化の実現、外国軍基地の設置禁止などとならんで、食糧主権の確立を宣言。今後、新憲法下で議会選挙を行い、憲法を具体化する法律を制定します。

 新憲法では、国民の権利のトップに「水と食糧」に対する権利を位置づけ、国民は「地元で生産される安全で栄養がある十分な食糧に対する権利を持っている。政府は、食糧主権を促進しなければならない」と明記。とくに食の安全については、有毒な食品や人体への影響がまだ明確になっていない食品から消費者を守ること、遺伝子組み換え農産物の生産や流通を禁止するなど、踏み込んだ規定になっています。

 食糧主権実現にとって不可欠の農地改革についても「大規模な土地所有と土地の独占を禁止」し、「小規模農民に土地や水など生産資源に対する権利を与える」法律を制定しなければならないとしています。

 食糧主権は06年に西アフリカのマリ共和国で農業法の基本原理として採用されたのに続き、07年1月にはネパール暫定憲法に「すべての国民が食糧主権を有する」と書き込まれました。エクアドルは、恒久的憲法に食糧主権をもりこんだ最初の国になりました。

 同じ南米のボリビアでは、昨年12月に食糧主権を本格的にもりこんだ新憲法草案が提案されており、今年12月に行われる国民投票で成立する予定。ベネズエラでは、7月に「食糧安全保障・食糧主権法」が成立したほか、ニカラグア、アルゼンチンなどでも同様の動きが進んでいます。

 国連人権理事会は、各国政府に対し、国連人権規約にある「食糧に対する権利」をより確かなものとするために「食糧主権」の採用と実践を求めており、食糧主権は、単なるNGOのスローガンの域を超えて、世界の現実政治を動かしつつあります。

 エクアドル新憲法の成立が、この流れをさらに確かなものにすることはまちがいありません。

 エクアドル 人口約1340万人。1822年にスペインから独立。クーデターによる政権交代が繰り返されてきましたが、1979年に民政移管。2006年11月、反米左派のコレア氏が大統領に当選。

(新聞「農民」2008.10.20付)
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2008年10月

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