どうなっているの? 日本の水産業 =4=
大養殖場を開発する漁業資本農業のように、種苗からエサをやり成長させて生産する方法を養殖と呼んでいます。養殖は、資源の荒廃により漁獲が減少し、その補完として開発されてきました。現在では120万トン前後生産され、漁業生産の20%にもなります。養殖では100種近くの生産が可能ですが、事業化されている種類は、ハマチやマダイ、クルマエビ、ブラックタイガーなど30種前後です。最近では、マグロの養殖も沖縄や紀伊半島などで行われています。
東南アジアに広がる大養殖場しかし、国内の養殖場を見ただけでは、正確に養殖生産を把握したことにはなりません。インドネシアで行われているブラックタイガーの養殖場を例に紹介しましょう。写 真はスマトラ島にあるディパセナ・チトラ・ダルマジャ社です。見渡す限りの養殖池です。およそ5000ヘクタールの中に、0・2ヘクタールの養殖池が1万数千個並んでいます。日本では考えられない、想像を絶する規模です。それぞれの養殖池の間にはハウスがあり、住み込みの家族が池の管理をしています。その家族は約3万人で、養殖場の中には学校から病院、スーパーなど生活に必要なものはすべてそろっているのです。
このような養殖場が中国やベトナム、タイなど東南アジアに広がっています。この地域は、かつてマングローブ林の湿地帯であり、この開発によって「スコールがなくなった」とまで言われています。その上、このような養殖場は、サケ・マスやウナギ、フグにも同様な規模で開発されています。これらの魚はすべて日本、ヨーロッパそしてアメリカに輸出され、1匹たりとも現地で消費されることはないでしょう。
漁業資源を根こそぎ獲った後このような生産を通じて、私たちの魚食が成り立っているのです。つまり、バナナ、パイナップル、コーヒーなどの農産物に見られる多国籍穀物メジャーによる生産方式が、水産養殖業の中でも商社と食料会社が一体となって広がっているのです。沿岸沖合を効率漁具で引き回し、漁業資源を根こそぎ獲りまくり、その後は広大な養殖場を開発する―ここに、漁業資本の罪の深さがあります。しかし、こんな漁業がいつまでも続くはずはありません。“農業を家族経営で”と訴える「ビア・カンペシーナ」。漁業でも家族経営・共同経営での生産がどうしても必要です。 (21世紀の水産を考える会 山本浩一) (つづく)
(新聞「農民」2008.10.13付)
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[2008年10月]
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