「農民」記事データベース20080929-846-15

米屋さんが生産地と消費者を繋(つな)ぐ


「さわやか八起会」稲刈り体験ツアー

千 葉

 9月7日の千葉県いすみ市。黄金色の穂が頭を垂れる40アールほどの田に、子どもたちの歓声が響きました。米屋さんが生産者と協力してお客さんを招く「稲刈り体験ツアー」です。約350人の家族連れが、鎌を片手に汗を流しました。

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黄金色の田に親子づれの歓声が響きました(千葉県いすみ市)

 生産者と協力して

 ツアーを主催したのは、千葉県を中心とする米屋さんのグループ「さわやか八起会」(はっきかい、5店)と、いすみ市の生産者グループ「ちば国吉米匠の会」(くによしまいたくみのかい、41人)。八起会は、匠の会と栽培法などについて契約を交わし、大粒のコシヒカリを「万喜(まんぎ)米」という独自ブランド(登録商標)で販売しています。ツアーは、お客さんに産地を見てもらい、農作業に参加してもらうことで、いつも食べている米にたいする理解と愛着を深めてもらおうというねらいで企画されました。5年目を数える今年は、田植えにも約500人が参加しました。

 田んぼでは、親も子どもも作業に熱中。輝く稲穂は見る間に刈り取られていきます。でも、中には飛び出すカエルを追うのに忙しい子も。

 佐倉市の新穂孝行さんは、一家4人で毎年参加。「田んぼに素足で入るような経験は、子どもにとって貴重です。収穫した米は、親せきに配ります」といいます。実は、八起会は参加者の写真を撮って米の袋に印刷し、特別米として限定販売。これが大好評なのです。

 市川市の勝泉さんも、親せき一同で参加しました。おいの荒川公平君は「鎌でササッと刈るのは気持ちいい」と得意顔です。バッタやカマキリ、ヘビも捕まえました。

お客さんに米への愛着を

 作った気分に…

 このツアーの幹事役として奔走しているのが牧野基明さん。八起会に加盟する「(有)まきの」の3代目当主です。お父さんの代から多くの産地と深いつながりをつくり、特に近年は、米の流通に対する信頼を築くために、「お客さんと産地をつなぐ」ことに心を砕いてきました。産地に出かけて作業を体験してもらうことで、「米作りの喜びや、食の安心・安全も届けられるのではないか」と考えています。

 前出の勝さんは、いつもまきのの万喜米を食べています。

 「お店でお米について教えてもらったり、田植えや稲刈りに参加して自分たちもちょっとだけ『作った』という気分にもなれる。お米を買うだけでなく、そんなおつきあいが楽しいのです」と魅力を語ってくれました。

 一方、匠の会の清水方之(まさゆき)会長は、「参加される方が増えて受け入れもたいへんですが、農家の仕事を見て理解していただくことが何より。私たちも町に出かけて、郷土料理を紹介したりしています」。消費者との顔の見えるつながりが、市場より高めの価格を可能にしていることも、米作りの励みになっているといいます。

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店頭で玄米のはかり売りをする牧野基明さん

 資格を生かして

 牧野さんは「五ツ星お米マイスター」。お米の選び方やおいしい食べ方について的確なアドバイスができる専門家です。この資格を生かして、船橋市内の小学校の「食育」の授業でお米の話をしています。教室に稲を持ち込むと、子どもたちは興味津々となるそうです。また、公民館では料理教室も開催。「雑穀エキスパート」「野菜ソムリエ」などの資格も生かして、地域の人たちにお米中心の親しみやすいレシピを紹介しています。

 さまざまなアイデアで商売をひろげる牧野さん。農民連ふるさとネットワークとも取引を始めました。今度は何が生まれるか。出荷する側の知恵も問われそうです。

(新聞「農民」2008.9.29付)
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2008年9月

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