「農民」記事データベース20080929-846-01

近づく総選挙

農政を変える絶好のチャンス
農村で“一票一揆”起こそう

 「汚染輸入米」事件で食の不安がひろがっているのに、福田首相は政権を投げ出して“やる気なし”。自民党は総裁選挙で「お祭り騒ぎ」…。
 しかし、9月24日に臨時国会が召集され、新しく選出された首相は冒頭にも国会を解散し、総選挙は早ければ10月14日公示、10月26日が投票日でたたかわれます。そうすれば、総選挙の公示まで1カ月もありません。
 今度の選挙は、輸入自由化や減反強制、「構造改革」で農家切り捨てを推し進める農政を変える絶好のチャンスです。


 強制減反の農政ストップ!

画像 北海道岩見沢市の稲作農家 佐々木輝彦さん(46) 米を作っていてバカくさくなることばかり続いている。農水省の米の生産費調査によれば、私たちの労働が「時給179円」にしかならない。減反を無理強いしながら、買い手もいないミニマム・アクセス米を輸入しつづけ、ついには「事故米」を食用に転用するというとんでもない事態まで引き起こした。そして収穫が近づき、少し米が多くとれそうになると、「集荷円滑化発動だ」と騒ぎ立てて取り上げる。

 6・3ヘクタールで米を作っているが、反当たりの収入が10万円を切った。少なくても12万円なければやっていけない。米の減収分を転作作物でカバーしようとやりくりしているが、肥料や生産資材が高騰し、それも限界だ。

 こんな農政を進めておいて、あげくの果ては責任逃れの「政権投げ出し」。収穫時期に解散・総選挙になりそうだが、自分の経営を守るためにも、米作りが続けられる政治に変えなければいけない。「忙しい」とばかりは言っていられない。やるときはやる! がんばろう!

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山形・上山市の“全国かかし祭”――撮影=菊池喜英さん

 夢や希望がもてる農政に

画像 愛知県農民連・渥美農民組合の河辺正男さん(61) ここは黒潮の影響と冬場も日照に恵まれているので、年間を通 じて温暖な地域です。そのため、昔から施設園芸の盛んな地域として発展してきました。農家数は減少していますが、約4500戸のうち2000戸が専業農家。その多くが電照菊などの花きを中心とした施設園芸で、生産資材など経費のかかる引き算の多い農業です。

 いま、原油や肥料などの暴騰で直撃を受け、存亡の危機に直面しています。昨年1リットル70円前後の重油代が、いま113円と6割以上の値上げです。1農家あたり平均で年間30キロリットルから50キロリットル使っています。これに、肥料などの値上げです。今も農業は“バクチ”と言われることがありますが、バクチでもやる前には夢があるものです。ところが、計画の段階からひとつも夢や希望が持てません。こんなことは生まれて初めてです。

 これでは地域は疲弊し、せっかく育っている後継者までいなくなってしまいます。投機マネーを規制し、直接補てんは“待ったなし”の課題。農産物は簡単には価格に転嫁できません。どうしても、農業経営の根幹として価格保障・所得補償が必要です。

 農村で「一票一揆」を起こす以外に、農家の経営と暮らしを守り、展望を切りひらくことはできません。

 負担急増の酪農、選挙で打開

画像 千葉県睦沢町の酪農家 中村種良さん(56) トウモロコシ、麦など穀物の高騰で、えさ代が上昇し、原油の高騰が燃料費の増加に拍車をかけています。肥料代も大きな負担になっています。非遺伝子組み換えトウモロコシや大豆を配合した飼料代は、この1年間で1トンあたり1万2000円〜1万3000円上昇しました。1カ月に約12トンの飼料を使いますから、14万円から15万円の負担増です。

 畜産・酪農家は、コスト上昇分を、販売価格に転嫁することはできません。農業に限らず、しわ寄せはいつも弱者。こんな不平等な政治は、絶対にたださなければなりません。

 飼料の高騰に対応して、地域で仲間たちと麦を作って、飼料を自給する取り組みを始めています。しかし、これでも種や肥料代、機械代など、麦の栽培に経費がかかり、負担の軽減にはほど遠い状態です。働いても働いても、状況はよくなりませんが、とにかく続けるしかありません。

 不平等や生活の苦しさを改善するのは政治。農家の生活を守るためにも、総選挙は、政治を変えるチャンスです。

 資材・肥料アップ、支援の手を

画像 高知・土佐文旦産直センターの矢野知さん 汚染米の事件、本当に頭にきています。食べ物の安全性や物価の値上がりなど、生活に直結する部分を、なんとか改善してほしいというのが、今の私の一番の願いです。そしてみんなの願いでもあるのではないでしょうか。食べ物も、燃料も、農業資材も、肥料も、すべてが値上がりしていて、これを阻止できるものならデモ行進でも何でもしたいような気持ちです。

 農産物価格が全体的にすごく下落しているので、私の生産する文旦(ぶんたん)も価格は厳しいです。宅配で産直するにも、輸送費が上がっているし、景気の悪化が心配です。

 私たちは、農民連の会議などで政治や社会のことがわかりますけど、テレビでは自民党や民主党しか出ないし、報道が偏っていると思います。自民党の総裁選だって、仲間うちの背比べ。この厳しい農業情勢や社会情勢をつくってきた自民党や公明党は、地方の中山間地の姿を見に来てほしい。誰も通らない山の上に立派な道路を造るくらいなら、生活や農業に本当に必要な所に支援してほしい。

 とにかく、選挙に行かなければ政治は変わりません。しっかりした目を持って、みんなで投票に行きましょう。

(新聞「農民」2008.9.29付)
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2008年9月

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