どうなっているの? 日本の水産業 =2=
むずかしい水産資源の管理
漁業の現場には多くの問題がありますが、最初に紹介しなければならないのは、漁業資源管理の問題です。
「入口」と「出口」とで漁獲量規制
日本の漁業資源は、魚から貝類、海藻類まで約350種あると言われていますが、これらの資源を管理することは容易ではありません。また、それらの魚を漁獲するのですから、網から船まで多種多様な漁具漁法があります。この漁具漁法を管理規制しているのが、「入り口管理」といわれる漁業権制度です。これは漁業法によって制度化され、大臣許可、知事許可そして区画漁業権、定置漁業権、共同漁業権などに分かれ、漁船の隻数、漁場の制限、漁獲物の体長制限などを3〜5年の期間で規制しています。
もう一つは「出口管理」で、TAC制度によって漁獲量を制限しています。ただし、韓国や中国を意識して、サバ類(ゴマサバ、マサバ)、アジ、スルメイカ、サンマ、マイワシ、ズワイガニ、スケトウダラの7種だけを対象にしています。一見、厳格な漁獲量規制にみえますが、EUなどが20種以上規制しているのに比べれば、資源を第一義的に考えているとは到底思えません。
最低価格保障か輸入規制するか
現に、毎年の漁獲量や資源調査を見ると、日本沿岸で資源状態が良好なのは、ゴマサバ、サンマ、ウルメイワシ程度で、多くの魚種が減少傾向にあり、あまり好ましい資源状況ではありません。つまり「入り口・出口管理」といっても、実はなるべく自由に多くの漁獲ができ、制限は最低限にしようという考えがあるからです。特に、漁業法による規制は、戦後の食糧難を背景に、より自由により多くの漁獲ができるよう、巻き網や釣り、定置網などの漁業で、どう分け合って獲るかを決めてきました。そこには、魚は自然にわいて出るもの、無限の資源と考えてきたようにも見えます。
世界中から安い魚を自由に輸入する中で、漁獲量を制限すれば漁民の経営は成り立たず、どうしても漁獲オーバーになってしまいます。漁獲量を制限するならば、経営が成り立つように最低価格を保障するか、そうでなければ輸入規制を行うことがどうしても必要です。
(21世紀の水産を守る会 山本浩一)
(つづく)
(新聞「農民」2008.9.15付)
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