食糧危機・気候変動・アグロ燃料ビア・カンペシーナ東南・東アジア
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会議に先立ち記者会見に臨む各国代表団
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米騒動下のフィリピン代表は「WTOがスタートして以来のわずか10年間で、フィリピンは米やタマネギ、ニンニク、砂糖などの輸入国に転落した。食糧危機の根源には新自由主義政策とWTOがある」と告発しました。
一方、世界最大の米輸出国であるタイの代表は「米価上昇で利益を得ているのは多国籍企業だけで、農民はまったく恩恵を受けていない。オーストラリア・中国とのFTAによって、牛乳、肉牛、タマネギの輸入が増え、タイ国内の生産者価格が下落している。さらに、タイ政府によるアグロ燃料作物の奨励によって食糧危機が深刻化している」と報告。
農産物輸入国でもあるマレーシア、インドネシアの代表も飢餓・栄養不足人口が急増している事実を指摘し、政府のまちがった政策をただし、食糧主権を確立すれば、食糧危機は打開できると強調しました。
一方、農民連には「自給率向上が法定化されている意義」についての報告が求められました。白石会長はこれに応えて、(1)食料・農業・農村基本法には国民と野党の強い要求で自給率向上がもりこまれたが、これ以外の条文は自給率引き下げにつながるものばかり、(2)経済財政諮問会議などでFTA・EPA促進、自給率引き下げの議論が行われるなど、食糧主権確立・自給率向上に対する逆風がある、(3)しかし、この条文が政府の手をしばっており、農民連はこの法律の枠組みを脱却し、食糧主権にもとづく枠組みに変えることを求めてたたかっていることを報告。詳しい内容があらかじめハングル語に翻訳されて紹介されていたこともあり、韓国からの参加者の関心を集めました。
韓国の仲間の説明によると「あの運動に“首謀者”などいない。1万に近いさまざまな団体がインターネットで情報を交換し、草の根から盛り上がったのがキャンドルライト・デモだった」。
代表団は会議の最終日の夜、韓国仏教総本山の立派な寺院に出かけました。原理主義的なクリスチャンでもあるイ・ミョンバク大統領は、牛肉輸入解禁反対闘争の盛りあがりに懲りもせず、今度はソウル市内の地図から仏教寺院を抹殺するという挙に出て、仏教徒が猛反発。大統領の退陣を求める幕が張られた境内には、指名手配中の活動家がテントを張ってたてこもっていますが、警察は手を出せないという状態です。代表団は彼らとがっちり握手して連帯しました。
各国代表らは、韓牛とマッコリ(濁酒)の名産地であり、強い農民組織があるヘンソン市を訪問しました。ここでは、南北の再統一を願って「統一田」が耕作され、豆腐やキムチなどの農産物加工に力を入れています。子どもの農業教育やビデオ制作などのサークル活動に取り組む女性農民センターや、2日に1回開かれるという青空市を訪れ、しばし韓国の農村を味わいました。
相互交流に合意し、記念撮影する日韓の代表
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ヘンソン市を訪問。農産物があふれる市場を視察した
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食事は辛さを除けば、普段食べなれているものとベースは同じで、とりわけ米のおいしさには驚きました。やや食事に難のある私でも、ここの食事にはすんなりなじみ、念のため日本から持っていったインスタントみそ汁などは、バッグに入れたまま韓国と日本を往復する羽目になりました。
それにしても、韓国と日本の農業が置かれている共通点の多さに驚きました。政府は、食料自給率が極端に低いにもかかわらず、WTO、FTA・EPAを推進しようとしていること、後継者不足と高齢化問題などです。
したがって、運動の面でも共通の課題が多数あります。韓国の農民組織との交流や共同行動の検討は、日本の運動にとっても視野を広げ、新たなステップになる可能性があると期待しています。
地域会議では、食糧危機、気候変動、アグロ燃料など人類の生存にかかわる問題が論議されましたが、どの問題も食糧主権の確立なしには解決できないことが浮き彫りになりました。ビア・カンペシーナの一員として日本での運動を担っている農民連の役割がいっそう大きくなり、各国の期待も高まっていることを強く感じました。今後の奮闘を決意しながら帰国しました。
[2008年9月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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