「農民」記事データベース20080804-839-12

本の紹介

笠松和市・佐藤由美共著
「持続可能なまちは小さく、美しい」


高齢化・過疎化の町の
ユニークな地域づくり物語

画像 四国山脈のふもと、徳島県上勝(かみかつ)町は、人口二千人弱の四国で一番人口の少ない町。この本は、この小さな小さな農山村が、「持続可能な地域社会」という大きな目標をかかげて取り組んできた「挑戦」の記録です。…というと難しい専門書のようですが、さにあらず。農家のお年寄りやお嫁さんなど、村じゅうの人びとみんなが加わって生まれた、ユニークなまちづくりの物語です。筆者は、町長の笠松和市さんと環境ジャーナリストの佐藤由美さん。

 林業と、棚田による米作りと、ミカン畑が基幹産業だった上勝町の人口は、一九五〇年には六千人を超えていました。しかしその後、高度経済成長とグローバリゼーションの波にさらされ、町の農林業の衰退とともに人口は減少。現在は町民の約半数が六十五歳以上。町内に五十五ある集落のうち三十が限界集落という高齢化した町となっています。

 しかし、ここで絶望しないのが上勝町のすごいところ。本書では、上勝町の持続可能な町づくりを、四つの視点から描いていきます。

 日本料理に飾りとして添える野の花や木の葉などを特産物にした農業再生。全国最多の三十四分別で八〇%をリサイクルするというゴミ対策。木材の地産地消による林業の再生。そして若い世代が住み続けられる地域づくりなど、ユニークな行政は多くの人びとをひきつけ、現在では人口の六%をI・Uターン者が占めるまでになっています。

 本書は、高齢化・過疎化という全国の農山村が抱える問題に、たくさんのヒントを与えてくれます。ぜひご一読を。

▼定価 1500円+税
▼出版 学芸出版社 TEL 075(343)0811

(新聞「農民」2008.8.4付)
ライン

2008年8月

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