農のこころ

丸山美沙夫

　晩年やほろりと辛い夏大根

　　　　　　　　　　辻野　文子

　俳誌『花藻』から。普通には秋に種を蒔いて冬に収穫するので、冬の季語とされている。夏大根は春に蒔いて夏に収穫する。一回り小さくて辛味の強いのが特徴である。この句の「晩年や」には、農ひとすじに生きてきた者の思いが込められているようだ。「ほろりと辛い」大根の味と、辛口の農政を突く爺の声とも。