“ダメ・サミット”を検証する
食糧危機・石油危機打開策
「ないない尽くし」サミット
「金持ちクラブの無力さ」「G8は覇気も生気もない老人がいばっているようなもの」――フランスやシンガポールの新聞がG8サミットを酷評しています。
今回のサミットに求められていたのは、地球温暖化と食糧危機、原油高騰など、先進国が作り出した危機をどう打開するかでした。しかし、史上最高といわれる六百億円もの予算を使ったサミットは、これらの課題に対する処方せんを描く意欲も能力もないことを示す無残な結果に終わりました。
サミット直後に公表された公的報告と対比して、“ダメ・サミット”を検証します。
拡大する投機被害G8「さらに分析」
昨年のサミットでは、議長国ドイツのメルケル首相が投機に対する規制を提案しましたが、投機資本の“本国”であるアメリカ、イギリスが反対し、日本も同調してつぶされました。
今年は、原油・食糧高騰によって投機の被害がはるかに拡大しているにもかかわらず、議長である福田首相は規制を提起さえせず、「価格高騰の要因として投機の側面は議論にならなかった」(外務省幹部)といいます。
その結果、採択された「世界経済」宣言では、高騰の要因や影響を「さらに分析する」と述べるにとどまりました。
しかしサミット直後の七月十五日に公表された『通商白書』は「近年の急激な価格高騰は、投機資金の流入が大きな役割をはたしている」と断定。トウモロコシ価格の五〇%、原油価格の四〇%が投機などによる押し上げ分と推定しています(図1、2)。
閣議決定文書がここまで断定しているのに、福田首相は一言も触れず――“他人事首相”の面目躍如というところです。
封じこめられたアグロ燃料への批判
投機とならんで、食糧危機の大きな原因であるアグロ(バイオ)燃料。
イギリスの新聞「ガーディアン」(七月四日)は「秘密報告――バイオ燃料が食糧危機を引き起こした」という記事を掲載しました。世界銀行のエコノミストが四月に作成した「世界的な食糧価格高騰の要因のうち、バイオ燃料は七五%を占める」というリポートが秘密にされ続けているというのです。
世界銀行の報告が暴露されたにもかかわらず、サミットではアグロ燃料に対する批判が封じこめられ、採択された「世界の食料安全保障に関するG8首脳声明」は、次のように空々しい文言を並べあげました。
「バイオ燃料……が食料安全保障と両立するものであることを確保し……科学に基づく基準と指標を策定する」
人と車が食糧を奪い合うという切迫した事態の前で、この声明は何も言っていないに等しいと言わなければなりません。
目と耳をふさいで洞爺湖の超豪華ホテルで密室の宴を繰り広げたG8。しかしどんなに目と耳をふさいでも、悪事はばれるものです。
『通商白書』は〇八年の食糧需要増加のうち、四〇%以上がアメリカのアグロ燃料によるものだと指摘(図3)。これはブッシュ大統領の「インド人が食べすぎるから食糧危機になった」というとんでもない言いがかりに対する有力な反証です。
さらに追い打ちをかけるように、七月十六日には“先進国クラブ”OECDがバイオ燃料に関する報告書を公表。「バイオ燃料は食糧価格を押し上げる副作用が大きい反面、地球温暖化の防止効果は小さい」「途上国で食糧難を招く」と批判しました。
「ノー・モアG8」
このようにサミット終了後一週間もたたないうちに、次々にサミットの無力・無責任ぶりが浮きぼりになるのは前代未聞です。
その背景にあるのは、“ブッシュ・福田主導サミット”の限界です。サミット前日の七月六日に開かれた日米首脳会談では日米軍事同盟の強化を改めて確認する一方、投機とバイオ燃料について「そこまで細かい話はしなかった」(外務省幹部)。
「日経」(七月八日社説)は「世界経済を揺さぶる根本問題については『ないない尽くし』だったことになる」と批判しました。
ビア・カンペシーナと農民連・食健連は「ノー・モアG8」「G8はいらない」をスローガンにデモを行いましたが、ムダづかいと過剰警備、入国拒否にも彩られた史上最悪のサミットは「もういりません」。
〈お知らせ〉八月十八日号は休刊とさせていただきます。
(新聞「農民」2008.8.4付)
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