GMナタネ自生調査
農民連食品分析センター 08年検出は48
飼料・搾油会社付近で見つかる
港から10キロ離れた地域でも
多くの地域で対策すすむが
汚染地域に広がり
農民連食品分析センターは二〇〇八年三月から六月に行った遺伝子組み換え(GM)ナタネ調査の結果を発表しました。調査は、輸入されたセイヨウナタネが搬入時または運搬時に道路脇などにこぼれ落ち、自生しているものが、遺伝子組み換えかどうかを調べたもの。
調査結果は、分析センターの遺伝子組換えナタネ調査隊と一般の参加者の調査を合わせたものです。
今回の総検体数は百四十一(分析センター百十八、一般参加者二十三)。そのうちGMナタネは四十八検体でした。
内訳は、除草剤ラウンドアップ(成分名グリホサート)をまいても枯れにくいタイプ(RR)は三十一、除草剤バスタ(成分名グルホシネート)をまいても枯れにくいタイプ(LL)が十七でした。
一般参加者の検出は三重県の三件でした。(詳細は表参照)
今年は、こぼれ落ち防止や抜き取り作業など、企業や市民団体による対策が、多くの地域でとられていることが確認できました。しかし、きれいに対策がとられているところでも、セメントのすき間からナタネの芽吹きが見られるなど、対策の難しさが感じられました。
例年どおり、飼料会社のベルトコンベアの下や搾油会社付近などでの検出例が多く、今まで検出のなかった港や地域、また港から十キロも離れた場所でもGMナタネが見つかりました。
より詳しい調査地点、調査ルート、調査結果はホームページで確認できます。
http://earlybirds.ddo.jp/natane/
市民による自生調査4年目、海外でも注目
名古屋で報告会
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンと遺伝子組み換え食品を考える中部の会は七月十二日、名古屋市内で「2008年GMナタネ自生調査報告会」を開きました。生協や市民グループによる調査は四年目に入り、海外からも注目されています。
報告に先立ち、四日市市民大学の河田昌東さんがドイツ・ブレーメン大学のGM問題国際会議に参加した模様を報告。ドイツでもセイヨウナタネの畑から種子を港に運ぶ過程でこぼれ落ち、自生している実態をのべました。京都学園大学の金川貴博教授は、遺伝子組み換え技術の問題点について講演。「GM食品の事前の安全審査はとりあえずの結果でしかなく、安全性が保証されるものではない」と指摘しました。
議会に規制条例策定働きかけ
報告では、キャンペーン代表の天笠啓祐さんが調査全体の特徴を報告し、「調査技術が年々熟練するとともに、引き抜き作業などを実施しているが、自生状況は改善される気配がない」とのべました。さらに他のアブラナ科植物への交雑の可能性や食べ物汚染が現実化することへの懸念を表明し、「今後とも調査を継続しよう」と呼びかけました。
日本各地にGMナタネが生育
今後さらに調査継続しよう
各団体の報告では、農民連食品分析センターの八田純人さんのほか、六団体が報告。セイヨウナタネの抜き取り・駆除作業を他団体と協力して実施した遺伝子組み換え食品を考える中部の会、高校生や大学生と共同調査をした生活クラブ生協と生活協同組合連合会きらりが発言しました。グリーンコープは、調査結果
を自治体、議会に伝え、GM作物栽培規制条例や食の安全・安心条例の策定を働きかけた取り組みを紹介しました。
分析センター以外の調査結果は、総検体数が千六十一、そのうち一次検査で遺伝子組み換えが見つかったのは、茨城、千葉、静岡、愛知、兵庫、山口、福岡、熊本、大分の九県で三十八件。内訳はRRが二十七、LLが十二で、茨城で検出された一件は両方に耐性をもつものでした。
世界のGM作物の現状報告
第二部では、世界のGM作物の現状報告。キャンペーンの纐纈(こうけつ)美千世さんは、六月にオーストラリアを訪問し、GMナタネの栽培を凍結するモラトリアムを継続するよう求めた取り組みを紹介しました。
市民セクター機構の清水亮子さんは、ドイツ・ボンでの生物多様性条約締約国会議(五月)に合わせて開かれたNGO会議で、生物多様性のすばらしさを訴えるパレードやフェスティバルに参加した経験を報告しました。
種子ネットの入沢牧子さんは「トウモロコシでも種子採取の際にGMと非GMのふるい分けが行われているが、混入は避けられない」とのべ、トウモロコシのGM検査を呼びかけました。
最後に参加者は「遺伝子組み換え食品は作らない、扱わない、食べないという立場を貫きます。遺伝子組み換え食品がなくなる日まで闘っていきます」とするアピールを採択しました。
(新聞「農民」2008.7.28付)
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