G8は食糧危機を利用して
自由貿易協定を促進しようとしている
二〇〇八年七月九日 ビア・カンペシーナが声明
ビア・カンペシーナはG8洞爺湖サミットの閉幕にあたって、「声明」を発表しました。
関連/増産を合言葉に 政治かえる運動を
昨夜、世界的な食糧保障についてのG8声明に対して、ビア・カンペシーナのリーダーの一人、農民連の真嶋良孝氏が発言した。「われわれは、なぜG8がさらなる自由貿易をもって食糧危機を解決しようとしているのか、理解に苦しむ。なぜなら、農業と食糧市場の自由化こそが、現在われわれが直面している危機を引き起こした原因であるからだ。人々は、不安定な世界市場から自分たちの生活を守るために、地域の食糧を消費する必要がある。われわれには輸入食糧はもう必要ではない」と。
また本日の記者会見で、各国の農民代表者たちは「G8の各国政府は、生産者と消費者ではなく大企業に有利な自由貿易協定を助長するために、現在の食糧及び気候変動の危機を利用している」と非難した。
G8声明は、機能していない世界貿易機関(WTO)の交渉を回復させることと、各国の食糧輸出規制の廃止を要求している。しかし世界の小規模農民の生活や食糧生産は、自由貿易及びWTOの政策により破壊的な影響を受けている。彼らは国内市場を保護し、持続可能な小規模農業を行う農民の生活を支え、かつ国内で生産された食糧を確保するという国の権利を守っている。
G8声明は、現在の食糧危機を引き起こした二つの原因に何も言及していない。大貿易企業や多国籍企業による食糧投機、そして新しいエネルギー資源としてのアグロ燃料の開発である。これら食糧危機の主要な原因は、G8の政府、WTO、世界銀行や他の機関により進められた新自由主義政策にある。
最後に、G8はまた食糧危機の解決策としてアフリカの緑の革命(AGRAイニシアチブ)と遺伝子組み換え食品を明確に推進している。遺伝子組み換えの種子、大量の殺虫剤や化学肥料を使い、モノカルチャーによる工業的農業の発展は、多数の農民に債務を負わせた。また化学汚染が土地を荒廃させた。小規模農民はアグリビジネス企業の参入のために市場から追放された。この食糧生産のモデルは、化石燃料の集中的な消費にもとづいており、地球温暖化に明らかに影響を及ぼしている。
G8声明は小規模農業について言及している。真嶋氏は「世界の最も豊かな国々は、集会に参加するための小規模農民の入国さえ許可せずに、どのように彼らを支援することができるのか疑問だ」と述べた。七月五日、ビア・カンペシーナに所属する十九名の韓国人農民は、四十八時間の抑留を受けた後に、彼らの目的である会議に出席することもできずに、韓国に強制送還された。
小規模農家は現在、世界の食糧生産の大部分を担っている。彼らは地域市場に向けた小規模生産を行うことで雇用機会を増やし、消費者の健康や環境を守り、文化や地域社会を尊重することに貢献している。彼らの声に耳を傾けない限り、現在の食糧危機の解決策は見出されない。今こそ食糧主権を実現する時だ。
笹渡事務局長を講師に 福崎町(兵庫)で学習会
兵庫県福崎町で六月十五日、農民連の笹渡義夫事務局長を講師に「今、日本農業を考える」と題して学習会を開催し、五十人が参加しました。
嶋田町長あいさつ
はじめに、農民連会員でもある地元福崎町の嶋田正義町長が「福崎では、水田の半分を減反。しかし放棄田はいっさい出していない。農業は食料だけでなく水や環境にも影響する。知恵と力を農業にいかしていこう」とあいさつしました。
笹渡事務局長は、世界各地の食糧暴動、輸出を規制する国が相次いでいることなどを紹介。日本がカネで食糧を買いあさる時代が終わり、食料自給率の向上は“待ったなし”だと述べました。また、ミニマムアクセス米の中止、「過剰」を口実にした減反政策の見直しは避けられないと指摘し、食糧の大増産が求められている時だと強調。増産を合言葉に、政府を揺り動かす運動をしようと呼びかけました。
質疑応答では、「肥料も投機の対象になっている。リンやカリの原料が値上がりし、手に入りにくくなっているがどうしたらよいか」「猿害で困っている。作る意欲が萎(な)えている。どうしたらよいか」など具体的な問題が出されました。また「七十五歳以上が後期高齢者と称していじめられているが、戦後、食糧増産などでがんばってきた人たちだ。なんとか農業を魅力あるものにし、バトンタッチしたい」など、農業への思いなどが語られました。
(兵庫農民連 上野信行)
(新聞「農民」2008.7.21付)
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