ビア・カンペシーナ、農民連が対抗行動
食糧危機・地球温暖化解決の道
食料主権確立でこそ
多国籍企業やアグリビジネスの横暴告発
北海道に集った九カ国十八人のビア・カンペシーナなど海外の仲間たち。農民連、食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)の仲間も全国と北海道から約七百人が、七月四日から八日まで札幌、岩見沢両市を中心にG8洞爺湖サミットに対抗する行動を展開。この行動は「食糧主権の確立こそ、食糧危機や地球温暖化など直面する課題に立ち向かえる道である」(ヘンリー・サラギさん=ビア・カンペシーナ国際代表)ことを示しました。
何の対策も打ち出せなかった
G8サミット
投機マネー、アグロ燃料に策なし
自由貿易のさらなる推進やWTO(世界貿易機関)交渉の回復に活路を求めようとするG8の首脳たち。七日から三日間のサミットについて、福田首相は「多くの成果を生み出すことができた」と自画自賛しました。しかし、食糧危機を引き起こした投機マネーとアグロ(バイオ)燃料にはなんら歯止めをかけられませんでした。地球温暖化問題でも、温室効果ガス削減の中期目標(二〇二〇年)では具体的な数値が示されず、長期目標(二〇五〇年)でも見るべき進展はありませんでした。
サミットに先立つ日米首脳会談では、投機マネーについて「そこまで細かい話はなかった」と言い、バイオ燃料についても「細かい話をしなかった」と日本政府自身が認めるように、結局、ブッシュ米大統領の言いなりにサミット自体が引きずられた格好です。
シンポなどで交流解決策を提案し
これにたいし、フォーラムやシンポジウムで、各国の農業の現状を交流しながら解決策を提案したビア・カンペシーナ、農民連の対抗行動。多国籍企業やアグリビジネスの横暴を告発し、家族農業、小規模農民こそが農業を支え、食糧危機を解決する重要な担い手であることを確認しました。
和歌山県海南市から参加した川野友恵さん(25)は「多国籍企業のもとでは、自分たちの食べ物を確保することさえ難しい。食糧主権とは地産地消など目の届く範囲でできることを世界全体でやっていくことからスタートすることだとわかりました。一人ひとりつながっていくことが大事ですね」と語っていました。
|
食糧危機、地球温暖化の打開の道を探ったフォーラム=4日、札幌・共済ビル |
心のこもったもてなしで激励・歓迎
札幌市の中心街でヘンリー・サラギさんを先頭に五千人の長い隊列を組んだピースウオーク。
「チャレンジ・ザ・サミット 私たちの世界をつくろう!」をテーマに、平和への願い、労働問題の解決、食糧主権の確立を求めて、自らの思いを託したプラカード、のぼり、横断幕などデコレーションに工夫をこらして市民にアピール。警察による過剰な警備のもとでも、色とりどりの衣装、パフォーマンスで沿道の市民の注目をあび、温かい激励をうけました。
全国各地の伝統芸能を披露し、歌い踊りあった交流会。参加者は、地元で採れたおいしい料理を味わいながら、地産地消に取り組み、産直を進める農家の心のこもったもてなしにふれました。
北海道・空知産直センターの小橋都さんは「畑作農家は農繁期真っ盛りですが、みなさんの食事の準備をしてきました。女性部総出の体制ですが、みなさんに喜んでもらえて苦労が報われました」と振り返ります。
今回の行動は全労連など労働組合、新日本婦人の会、原水爆禁止日本協議会などの女性・平和団体をはじめ、NGO諸団体と手を取り合って共同を進める大きな足がかりになりました。
岩見沢市の農業視察や地元農家との交流は、農作物の栽培や販売など日本農業を世界に紹介する絶好の機会でした。
十九人の韓国の仲間たちが入国拒否にあい、強制帰国を余儀なくされました。しかし、どんな妨害も日本と韓国の農民、世界の農民とのきずなと連帯の輪を断ち切ることはできないでしょう。
|
ピースウオークに出発するビア・カンペシーナ、農民連、食健連の代表=5日、札幌・大通
り公園 |
食糧主権に注目内外マスメディア
食糧主権の旗を高く掲げた世界と日本の農民たち。ビア・カンペシーナの海外代表や農民連は、内外のマスメディアから多くの取材を受け、行動参加者の発言がたびたび取り上げられるなど食糧主権の主張が大きくクローズアップされました。
食糧危機、地球温暖化に何の対策も打ち出せずに終わったG8サミット。これに対し、食糧危機や地球温暖化など世界が直面している諸問題に、正面から立ち向かえる道が食糧主権であることを、北海道の地から大きく発信した今回のビア・カンペシーナと農民連の対抗行動でした。
(新聞「農民」2008.7.21付)
|