「農民」記事データベース20080623-833-01

地域づくりを担って、いま考えていること

福島県国見町の佐藤力町長(農民連の会員)
――農・農研での講演から――

関連/岩手・宮城地震 田んぼ陥没、土石流

画像 「弱いものや小さいものを切り捨てるのではなく、長所を伸ばすなかで悪いところを直していく。これが町づくりの基本です」―こう話すのは、農民連の会員でもある福島県国見町の佐藤力(つとむ)町長。六月八日、農業・農協問題研究所の第二十五回総会の後、「地域農業の振興と自治体・農協―地域づくりを担って、いま考えていることー」と題して講演しました。その一部を紹介します。


〈プロフィル〉

1947年生まれ、61歳。福島農産高校を卒業後、県経済連、国見町農協に勤務。6期24年、町議会議員として活躍。2004年11月、町村合併劇のなかで町長選挙に告示前日に出馬表明して当選。米や野菜、あんぽ柿などをつくる農民でもあります。


町づくりの基本は…
まず長所を伸ばして
悪いところを直していく

 県内30町村長が振興協議会に

画像 四年前、強引な町村合併に異を唱えました。そしたら、いつの間にか町長選挙に出馬するはめになり、誰もが予想しなかった町長に当選してしまいました。その時掲げた公約は四つ。第一に合併しないで当面 自立する、第二に人間を尊重する町づくり、第三に公立藤田病院を核に健康と福祉のまちづくり、第四に報酬の三割カット、黒塗り公用車の廃止です。

 福島県最北の町、宮城県との県境にある国見町は、桃とあんぽ柿、そしてコシヒカリの町です。

 道路建設のための促進会合は頻繁にひらかれますが、農業を振興しようという呼びかけはありません。そこで、県内の町村長の有志が集まって昨年十二月、「福島県農山漁村地域振興協議会」を立ち上げました。県内四十七町村のうち三十町村程度が加入し、農山漁村の課題解決と局面打開に向けて取り組んでいこうということです。ぜひ、こうした活動を町づくりにも生かしていきたい。

地域農業を盛り立てようと―
桃ワイン「MONMO」を開発する
超早場米「まんざいらく」を町特産に

 また、なんとか町の基幹産業である農業を盛り立てようと、「MONMO」という桃ワインを開発しました。ピーチブランデーはメチルアルコールが基準オーバーするなど四苦八苦しながら、やっと完成しました。ぜひ味わってみてください。

 また、八月のお盆前に収穫できる超早場米「まんざいらく」は、偶然見つかった新品種です。この米を生産し、昨年十一月、農民連ふるさとネットワークが主催した「大見本市二〇〇七」でも、自らトップセールスに立ちました。今年産から売り出し、ぜひ町の特産にしたいと思っています。

 地方交付税が減らされて大変

 しかし、なかなかうまく進まないこともあります。桃の選果用光センサーをあらたに導入する際には、農家が“スピードアップのはかれる機種にしてほしい”という署名を集めて要望したにもかかわらず、大型合併した農協からなかなか理解が得られず苦労しました。また、国が進める農地・水・環境保全事業ですが、上からカネが降りてくると、いままで築きあげてきた“ゆい”―地域の協力がこわされてしまうので、心配しています。

 「三位一体」のなかで地方交付税が減らされ、町の財政はたいへんです。弱音を上げて合併に走る町村もありますが、「合併してよかった」という話は聞こえてきません。かえって「合併しなくて、よがったない」と言われます。

 いま一番苦労しているのが…

 いま一番苦労しているのが、公約に掲げた「健康づくり」。国の相次ぐ医療改悪・医療費抑制で、核となっている藤田病院の経営も赤字続きですが、医者の増員をはかりながら、なんとか赤字を年々減らしています。子どもを安心して産み育てられるように、医療費の無料化は小学校六年生まで引き上げ、妊婦の検診も三回から十二回に。そして延長保育も取り入れました。

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人出でにぎわう町の農業祭(5月5日)

 なにごとも“悪いところをなんとかすっぺ”ではダメです。良いところ、長所をのばすところに目を向けないと、尻つぼみになってしまう。だからまず、良いところを伸ばすことが大事です。


岩手・宮城地震 田んぼ陥没、土石流

甚大な被害 地元の農民連役員ら被災地視察

 六月十四日午前八時四十三分に、岩手県南部を震源とする地震が発生。岩手県一関市、奥州市や宮城県栗原市を中心に、死者九人・不明者十三人、ケガをした人は二百五十人を超える(十五日現在)など甚大な被害が広がっています。

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土砂崩れで埋った岩手県一関市・佐藤金悦さんの田んぼ

 岩手県農民連の阿部四郎前会長、西磐井農民組合の菅原正直組合長、県連の岡田現三事務局長が被災地に入りしました。

 いまのところ、組合員にはケガなどの被害はないようです。被災した人の話では、「家のなかはめちゃめちゃで、田んぼの陥没なども出ている。いま小学校に避難しているが、牛を飼っているので心配だ。一時帰宅したいがヘリコプターでないと帰れない。道路の復旧が何よりの願いだ」と話していました。

 当面、不明者の捜索や断水の復旧などが急がれます。被災者の要求を聞きながら、暮らしや営農を再建するために全力をあげて取り組みたい。

義援金を全国によびかけ

〈義援金の振込先〉郵便総合口座10030―61671711 農民連災害対策本部

(新聞「農民」2008.6.23付)
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2008年6月

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