温暖化欧州の強い取り組み感じたEU諸国を視察し笠井亮衆院議員(日本共産党)に聞く洞爺湖サミットの議長国である日本の温暖化対策はどうあるべきか――温室効果ガスの排出を削減している欧州の環境対策を調査するため、日本共産党は三月、調査団を派遣。団長で衆院議員の笠井亮さんに聞きました。
目標やりぬく責任感もって調査を通して感じたのは、ヨーロッパでは共通して「危機感、緊迫感、責任感をもって必ずやりとげる」という政治姿勢がはっきりしていることです。TPCC報告やスターンレビューといった、しっかりとした科学的立場に立って、温暖化対策を今やれば危機的状況は防げるし、放置して影響が深刻化するよりも経済的な負担もずっと軽くすむ、ということが深く議論されていました。二つ目は、法的な拘束力のある中長期の(温室効果ガスの)削減目標をかかげて、政治・経済・社会的な仕組みづくりに取り組んでいることです。イギリスでは、二〇五〇年までに温室効果ガスの八〇%削減を目指して、包括的な対策を盛り込んだ「気候変動法」案が国会で審議中で、今年中にも成立する見込みですし、中期目標もイギリスもドイツも明確です。 ところが日本では、目先のもうけ優先の日本経団連や電力・鉄鋼業界などの反対で中期の削減目標すら立てられない。ここがヨーロッパ各国との大きな違いです。 その点、ドイツでもイギリスでも、政府と財界とが削減協定を結んで、目標をやりきれば利益になり、できなければペナルティーになるという仕組みになっています。また、ある産業分野が削減しきれなかった分は、別の分野が削減するという仕組みもあります。環境税や排出量取引などとも組み合わせて、大量に温室効果ガスを出している大企業なども含めて、国や産業界全体として目標を必ずやりきろうという姿勢ですし、実際、削減に成功しています。
自然エネルギーもとりいれ三つ目に印象的だったのは、自然エネルギー・再生可能エネルギーの活用を大いに進めていて、「社会のあり方を変える」ことと結び付けて取り組んでいることです。長時間労働がない、二十四時間コンビニもないなどライフスタイルが違いますし、公共交通を整備して、街づくりも公共交通中心に進めたり、イギリスでは町の中心部に入る車からは混雑税を徴収したり、温暖化対策は「人にやさしい」社会づくりでもあるんですね。 もうけ本位の社会である限り、環境問題と大量生産・大量消費・大量廃棄という仕組みがどうしてもぶつからざるをえません。しかし資本主義でもできる対策にぎりぎりまで取り組むというのがヨーロッパの経験だし日本の政策にも生かしたいと思います。
議長国日本が果たす役割京都議定書の議長国でもある日本には、EU各国をはじめ世界中の国々から先進国としての責任を果たすことが求められています。ドイツなども最初から先進的だったのではなくてゴミ問題、脱原発運動などで国民世論が高まって今の政策につながりました。日本では公害闘争という企業を規制して環境を守った、優れたたたかいの経験もあります。国民的な議論と合意を大いに広げて、政策に結び付けていく取り組みが重要です。地球温暖化は食料自給率や農業とかかわりの深い問題です。農民連が結成以来ずっと取り組んできた国民の食と農を守るすばらしいたたかいは、温暖化をくいとめる運動にも大きな力になると期待しています。
(新聞「農民」2008.6.9付)
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[2008年6月]
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