「農民」記事データベース20080526-829-08

この人

栃木・那須烏山市の陶芸家 八板郁雄さん(56)


田んぼの学校に熱い思い

 「フナやメダカが泳ぎ、ホタルが飛んでいた昭和四〇年代の田園風景が私の理想です」――。陶芸家の八板郁雄さんは、生まれ育った栃木県那須烏山市志鳥(しとり)地区の住民有志とともに四年前、「里山の環境を子どもたちに伝え、残したい」と「田んぼの学校・志鳥倶楽部」を始めました。

 田んぼでの魚道作り、昆虫採集や生きもの観察、米作りに草刈りなどの活動に、夏休みや休日を利用して、地元の子どもや親、都会の住民ら約四十人が泥んこになって参加します。

 陶器作り体験も志鳥倶楽部の活動の一つ。塾の事務局は、八板さんの作業場・志鳥窯(がま)に置かれ、八板さん自ら作陶を指導します。

 佐賀県唐津で修業を重ね、一九七九年に志鳥に窯を構えました。益子の土を使い、年に二回、登り窯に火入れして下野唐津を作製。わび、さびを感じさせる味わい深い花入れや食器ができ上がります。

 宇都宮市、さいたま市、茨城県ひたちなか市、福島県会津若松市などで個展を開き、地元の中学校では、陶芸の非常勤講師も務めていました。

 「志鳥窯周辺には、昔ながらの里山と自然が今なお残っています。地元や都会の人たちとの交流を通じて、農業・農村のよさを伝えていきたい」

 伝統を大切にし、次世代に残そうという願いは、田んぼの学校と陶芸双方への熱い思いとなって現れています。

(新聞「農民」2008.5.26付)
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2008年5月

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