シリーズ 地球温暖化
気候変動にさらされる米作農家
情報収集・技術交流…みんなで対処
「温暖化のせいなのかはわからない。だけど、昔と同じように米作りができなくなったのは確かだ」――全国の水稲農家からこんな声があがり始めています。
粒大きくならず収量は落ちた
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胴割れ米は精米時に砕けやすく、食味低下に関係。一見整粒にみえても(上)、光を当てると玄米内部に軽微な割れを生じている(下、矢印)。(出典・農水省ホームページ) |
記録的な猛暑だった昨年の夏。各地の水稲に高温障害が出ました。北陸地方もその一つ。富山県高岡市の水稲農家で米検査員でもある片山五三六さんは「去年は粒が大きくならず、選別
の網からこぼれる“網下米”が多かった。農水省は作況指数九九と発表しているが、実際は平均で十アールあたり六十キロ減収になっている」と言います。
富山県では八月一日に長かった梅雨がやっと明け、直後から猛暑に見舞われました。長梅雨で追肥のタイミングが難しく、米粒が小さくなってしまったのです。「それでも“稲の顔”を見ながら米作りできる農家はいい。ここ十年ほどは天候が予測できなくなっていて、時間と労力に余裕のない兼業農家への影響が大きい」と片山さんは指摘します。
同時に片山さんが強調するのは、「気候変動は確かに進んでいるが、田植え時期を遅らせたり、可能な対処法はもっとある。農家は不安ではあっても、絶望したりしていない」ということ。「むしろ米価下落の方がずっと苦しい」。
それは「収量が悪い」「品質が落ちた」と、水稲への高温障害が大きく報道されている九州でも同じ。「このところ収量は落ちていて、平年の栽培カレンダーどおりでは難しくなっているのは確か。でも、報道されているほど農家は絶望していない」と福岡県農民連事務局長の西島克己さんも強調します。
品質保って米づくり続けていく
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、“地球温暖化とは単純に暖かくなるのではなく、台風が強大になったり、豪雨や日照りなど極端な気象現象が増える気候変動なのだ”と警告。
それを予兆させるような農業被害が二〇〇四年にありました。この年は観測史上最高の七個の台風が上陸。日本列島を縦断した18号によって新潟県中越地方、西蒲原地域は塩害の大被害を受けました。西蒲原農民組合の今井健さんは、「弥彦で塩害なんて、地域の長老も生まれて初めてのことだった。台風の常襲地域といえば九州だと思っていたが、新潟も人ごとではなくなっているのかもしれない」と言います。
西蒲原農民組合では、高温障害の克服のため、地域でも先進的に取り組んできました。夏は水管理の徹底を呼びかけるノボリ旗が田んぼのそこここに立ちます。「確かに気候は変動しているが、みんなで情報を集めて、技術を交流して、みんなの力で対処することが未来への鍵ではないだろうか。なんとか品質を保って米作りを続けていきたい」と話す今井さんの言葉は、温暖化に立ち向かう農民の力強い決意を感じさせます。
(新聞「農民」2008.5.5・12付)
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