「農民」記事データベース20080414-824-01

止まらない食料品値上げラッシュ

国民の食卓震え上がる

原因 国際価格の高騰
食料自給率39%のツケ

 国民の食料を際限なく海外に依存する政策をとり続けてきた自民党農政。わが国の食料自給率は、世界でも異常な三九%にまで低下してしまいました。いま、そのツケが国民の食卓を震えあがらせています。いまこそ、食糧主権のもと、食料自給率向上の農政が求められています。


バイオ燃料への転換・温暖化で需給悪化
70年代「食糧危機」の水準以下

 30年ぶり値上げする企業も…

表 4月以降に値上げされる主な食料品と値上げ幅 原油や小麦などの価格高騰に伴う値上げラッシュが四月に入っても止まりません。昨年末から今年の春にかけて、パン、パスタ、めんなど小麦粉関連商品が相次いで値上げされましたが、牛乳・乳製品、大豆製品などにも値上げが波及しています。

 政府は、国際価格の高騰に伴い、輸入小麦の売渡価格を三〇%引き上げました。日清製粉、日本製粉は小麦粉を値上げし、今後パンやめんのさらなる価格高騰を招くおそれがあります。

 牛乳・乳製品では、飼料高騰に伴う酪農経営の危機から、業界最大手の明治乳業が三十年ぶりとなる値上げに踏み切りました。森永乳業もバターを値上げします。大豆価格の上昇に従い、しょうゆも値上げに。「価格凍結宣言」をうたい、自主企画(PB)商品で、値上げを抑えてきた大手スーパー、イオンも、PB商品の一部値上げを実施する事態に追い込まれています。

 こうした食品価格の値上がり傾向は、今後も続く見通しです。日本経済新聞の調査によると、主要食品メーカーの四社に三社が再値上げを検討しています。

 高騰で輸入できない純輸入国も

図 主要穀物の期末在庫率の変化 食料品値上げの原因は、国際価格の高騰です。二〇〇六年後半に比べて小麦は三倍、大豆、トウモロコシは二・五倍にも急騰しています。その背景にあるのは、世界の穀物需給がひっ迫度を増していること。二〇〇七・〇八年度の在庫率は、七〇年代初期の「食糧危機」といわれた水準以下の一四・七%。これは世界の消費量 の五十四日分でしかありません。FAO(国連食糧農業機関)は在庫率一七%、六十二日分を最低基準と定めていますから、まさに危機的な状況です。

 また、FAOが二月に発表した「収穫予想と食料事情」によると、タンザニアやケニアなど東アフリカでは、トウモロコシの価格が二〇〇七年夏に比べて一・五〜三倍に高騰し、飢えに苦しむ食料純輸入の途上国が輸入できない事態を招き、さらに飢えに苦しむ“経済的飢餓人口”を増加させています。

深刻な米不足 輸出制限国次つぎ

 農水省の見通しますますひっ迫

 農水省はこのほど「海外食料需給レポート2007」を発表しました。このなかで、一九六〇年代以来の世界の穀物需給動向と二〇〇〇年以降の特徴を分析し、世界の穀物需給が構造的変化を深めており、ますますひっ迫するという見通しを具体的な数字を示して明らかにしています。

 とくに大豆は、主産地アメリカでバイオ燃料向けトウモロコシへの作付け転換で、生産量・在庫量とも大幅に減少する見通しです。

 また「レポート」では、需給をめぐるさまざまな制約要因が明らかにされています。特に注目すべきことは、地球温暖化による栽培適地の変化や単位面積当たり収穫量(単収)への影響、資源の枯渇、土壌劣化などが加わり、これまで単収増加に支えられて収量を伸ばしてきた生産が、中長期的には困難になる可能性が指摘されていることです。「海外に頼ってばかりいられない」という穀物情勢が現実的に強まっています。

 さらに、東・東南アジア地域での穀物需給が、これまで以上に厳しい事態になることが警告され、急速に米不足が広がっています。世界最大の米輸出国タイでは、国際米価の高騰で輸出が急増し、国内消費用の米が不足必至の状況となり、輸出制限の検討が必要になっていると報道されています。すでに、インド、ベトナムに続いて中国、エジプトが米輸出を制限。四十五万トンの輸出実績(〇七年)があるカンボジアでも二カ月間の輸出禁止措置がとられています。一方、フィリピンでは、米不足から最高二百二十万トンもの輸入が計画されています。

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経済専門の週刊誌でも「食と農」の特集がくまれています

 “時代遅れ”の押しつけ減反政策

 同じ農水省が強行しているペナルティー付き減反は、こうした国際情勢とまったく矛盾した“時代遅れ”の政策であることがますます浮き彫りになっています。

(新聞「農民」2008.4.14付)
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2008年4月

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