「農民」記事データベース20080407-823-10

農民連の仲間はオモシロイ!

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 農業は奥が深い! 農民連の仲間はオモシロイ!――飼料高騰、資材も高騰、農産物価格は下落と、このところ厳しい話題の続く農業の現場。でも、もの作りの面白さを忘れず、人生を楽しみながら、どっこい農家はがんばっています。茨城県北部の二人の農民連会員を紹介します。


“人生に笑いと平和を”

いま腹話術に凝っている
稲作・兼業農家(茨城・常陸太田) 深谷武久さん

 税金勉強会で出合い

 常陸太田市の山里に住む稲作兼業農家の深谷武久さんは、今年六十歳。四十五年勤めた営林署を三月で定年退職し、同時に通信制高校をめでたく卒業しました。そしていま凝っているのが、腹話術。「よかっぺ竹林(ちくりん)」という腹話術師の芸名もちゃんとあります。相棒の人形は「つばさ」くん。

 農民連との出合いは三十年前、税金の勉強会でした。以来、自主申告ひとすじで二十三年。「軽トラ一台分くらい節税になったよ」と深谷さん。

 高校卒業式で答辞を

 深谷さんが営林署で働き始めたのは、中学校を卒業してすぐ。「あれから四十年、ずっと高校は卒業しておきたいと思ってたんだよ。二人の娘も結婚して独立したし、長年の夢をかなえようと思って。今さら給料が増えるわけでねぇけども(笑)、金でないのさ」

 毎週日曜日のスクーリングには片道五十キロの道のりを軽トラをとばして通学し、三日に一本のペースでリポートを提出。沖縄への修学旅行にもちゃんと参加しました。

 茶髪の青年たちに混じっての学生生活は――「いやあ、楽しかったよ。基礎から学べて、勉強って本当に楽しかった」と満面の笑みで話す深谷さん。「英語と数学には苦労したなぁ。なにしろ中学校は四十年前のことだから、テスト前なんて夜中の二時、三時まで勉強したさぁ」。そのかいあって、三月十六日の卒業式では、卒業生を代表して答辞を読み上げました。

 原木しいたけ増やし

 さて、これからの抱負は…。「山の生活をエッセーにして残しておきたい」「原木しいたけをもっと増やしたい」と、いろいろ計画はあるものの、「でも一番やりたいのはこれさぁ」と、これまた満面の笑顔とともに再登場したのが、人形のつばさくん。奥さんの房江さんと一緒に老人ホームを訪問したり、地域のイベントで子どもたちに披露したり、腹話術のこととなると話が止まりません。

 「人生に笑いと平和を」――深谷さんの名刺に記された言葉です。ある時は農民連の活動に、ある時は平和と民主主義を守る活動に、地域での活動にも決して手を抜かない深谷さん。名刺の言葉そのままの、地道で前向きな生き方と温かい人柄に、仲間からも厚い信頼が寄せられています。


“人も牛も無理しない”

ウデの確かな“農の職人”
和牛の繁殖農家(茨城・常陸大宮) 小林 伯さん

 1年に1頭出産させ

 常陸大宮市の和牛の繁殖農家、小林伯(はく)さんの畜舎はあります。ずっと以前に営んでいた養鶏の鶏舎を改造した牛舎は、けっして新しくはないけれど、清潔で、ゆったりとしていて、牛たちがいかにも心地よさそうにひなたぼっこ中。春の日差しに、漆黒の毛がツヤツヤと輝いています。

 「いやあ、特別なことは何も」と、謙そんしきりの小林さん。でも応接室の壁には、共進会の賞状やトロフィーがズラリと並ぶ、「農の職人」です。

 和牛繁殖を手がけて二十年。経営は、母牛が約二十頭と小規模ながら、昨年は子牛を十八頭出荷しました。牛の妊娠期間は十カ月、発情は一カ月に二〜三日しかないため、一年に一頭きっちり出産させるのが繁殖農家の見果てぬ目標とか。しかも、どの子牛も相場の一・五倍前後の価格で出荷できたというのですから、小林さんの“ウデ”はすごい。

 ゆったり清潔な牛舎

 「いやぁ、人気の血統を種付けしたからだよ」と、またまた謙そんしますが、肥育農家に人気のある血統を種付けするのはどの繁殖農家も同じ。しつこく尋ねてやっと「肥育農家は(小林さんの子牛は)体形がいいって言ってくれるんだけど…。どうしてかなぁ。うちは牛舎が比較的ゆったりしてるからかなぁ…」と、教えてくれた小林さん。

 つまり古い畜舎を大切に使うことで設備投資を抑えることができ、頭数も無理をしないから一頭当たりの面積を広く使って、牛を健康に育てることができる、ということなのです。効率最優先の流れのなかで、「人も牛も無理をしない」ことの大切さを教えられます。

 山あり谷ありの人生

 しかし小林さんも、昨今の飼料高騰にはなすすべがありません。「この経営規模でも、去年の飼料代は百万円も増えました。酪農や肥育農家はもっと大変だと聞いています」と小林さん。現在、えさのほとんどは購入飼料ですが、今後は自給飼料を増やしたいとか。そこで目下の悩みはその労働力と機械をどう工面するか、ということ。

 若い時には肺結核を乗り越え、働き盛りの五十代で脳梗塞(こうそく)から生還し、人生も山あり谷ありでした。「人も牛も無理をしない」農業の道を、これからも一歩一歩進んでいきます。


花よりだんご 安心して食べたいね
大阪・松原市 関戸しげみ

(新聞「農民」2008.4.7付)
ライン

2008年4月

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