海外の酪農は今―乳製品価格や生産者価格引き上げ
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乳製品の小売価格や生産者乳価を値上げする動きが活発なアメリカやEU諸国など(グラフ)。
アメリカでは二〇〇三年から生乳価格が上昇傾向にあります。
EU諸国では生乳価格や牛乳価格の値上げが実施されています。EU最大の生乳生産国・ドイツは、牛乳納入価格を一リットル当たり日本円にして約十三円の値上げ、生産者乳価を一リットル当たり約五円値上げしました。
乳製品製造業連盟の会長は「酪農家に適切な価格で支払うことが必要だ。酪農がこれ以上衰退することは避けなければならない」とのべています。
EUで最も低乳価のイギリスでさえ、大手メーカーが、生産コストの上昇に加え、生産量の伸び悩む生乳を確保するために乳価を引き上げています。ベルギーでは牛乳価格(店頭価格)を一五〜二三%と大幅に値上げ。オーストラリアやニュージーランドでも乳価が上昇傾向にあります。
また乳製品の国際価格もここ数年上昇を続け、今後十年間、高止まりの状況が続くと予想されています。
EUでは、乳価にたいする手厚い支援策も実施。生乳生産割当(クオータ)制度は、過剰生産による価格下落を防ぐ目的で、国別に定められ、超過分にたいしては課徴金が課せられます。バターや脱脂粉乳の介入買い入れを実施し、乳製品の価格を支持することで、生乳価格も支えています。
〇四年度からバター、脱脂粉乳の介入買い入れ価格引き下げが始まったことに伴い、その代償として酪農分野での直接支払い、酪農奨励金が導入。脱脂粉乳の飼料用消費やバターのアイスクリーム、ベーカリー用消費にたいする補助や牛乳の学校給食にたいする補助が実施されています。
かつては、中小の牛乳工場が酪農地域を中心に数多くありました。酪農家が搾った牛乳を工場に届け、そこで加工しながら消費者に新鮮な牛乳を提供していたのです。牛乳の地産地消でした。それがいまでは、都心部に大きな工場を造り、外国から原料を入れて加工品を製造するなど利益の追求を第一に大規模化しています。しかし、安心・安全・新鮮な牛乳は輸入できないのです。
厳しい経営のなかでも酪農家が牛乳を搾ってメーカーに届けているからこそ、乳業産業が成り立っているのであって、日本の酪農が衰退したまま、メーカーだけが生き残ることはありえないのです。また、私たち労働者にとっても、農家が搾った安全・安心な牛乳を消費者に届けることが誇りなのです。
今の、メーカーのもうけ本位の姿勢を問いながら、こうした現状を消費者にもっと知ってもらい、労働者、酪農家、そして消費者も巻き込んだ運動に発展させることが大事だと考えます。十八日の行動はその大切な第一歩です。
3・18酪農・畜産を守る中央行動
▽明治乳業本社要請行動 12時半〜 |
鈴木宣弘氏(東京大学大学院教授)の講演やパネルディスカッションが行われ、生産者が発言しました。そのなかでは、飼料価格の高騰に緊急な対策が必要なことや、畜産物の輸入自由化をたくらむ財界への批判、国産飼料を中心とした持続可能な酪農への転換が必要だ、などが語られました。
岩手中央酪農業協同組合滝沢地区協議会長の土屋卓之さん(滝沢村農民組合員)は、「四百五十人ぐらいを予定していたが、全県から六百人以上が集まった。ほとんど二月に入ってから参加を呼びかけたが、それだけ切迫しているということだと思う。大きい酪農家ほどたいへんというのが実態だ。飼料価格はもちろん、緊急の負債対策も必要だ」と語っています。
[2008年3月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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