「農民」記事データベース20080317-820-01

農民連が農水相に抗議

米作りすぎポスター
ただちに撤収せよ

“過剰どころか22万トン足りない”
農政の失敗を農民に責任転嫁するな

 「過剰なのは輸入米」「米価下落は農政の失敗。農民の責任にすりかえるな!」――東北農政局が作製した「米の作りすぎはもったいない」のポスターに、生産調整に参加している農家も含めて、全国の農民と国民の怒りの声がますます大きく広がっています。


〈農民連の態度〉
強制的な減反でなく転作支援策の充実を

 「米作りすぎポスター」をめぐって、若林農水大臣が二月二十八日の国会で「生産調整そのものに反対する団体である、作るだけ作らせるべきである、そういう人たちからの抗議」と答弁しました。農民連は三月三日、農水大臣のこの答弁に抗議し、ポスターの即時撤収を求める抗議文を提出、申し入れを行いました。(写真〈写真はありません〉

 農水省側からは、総合食料局計画課需給調整対策室の石橋大彦課長補佐が対応。石橋氏は、「大臣の国会答弁どおり、ポスターは回収しない」と答えると同時に、「米価下落は過剰生産のせい。生産調整しないともっと下がる。どうしてもやらなければならない」との答弁を繰り返しました。

 これに対し農民連は「ポスターは、低米価のもと必死で土を耕す農民の苦しみを理解しない農水省の姿勢の象徴だ」、「減反に協力してきたが、米価は暴落し、食料自給率は下がり続けているではないか。農政の失敗を生産者に責任転嫁するな」と強く抗議しました。

 「米が過剰というが、十月末の繰越在庫はいくらなのか」との問いに、石橋氏は「調査してない」と無責任答弁。「農水省は六月末在庫を官民合わせて二百六十一万トンと発表しているが、消費量から計算すれば十月末在庫はマイナス二十二万トン。備蓄米が百万トンあっても、その分新米を食いつないでいるのが実情だ。これで安定供給に責任が持てるのか」と迫ると、とたんにダンマリ。「転作も国が責任をもって展望を示すべきだ。転作作物の価格は米よりもさらに低く、しかも小さな農家を助成から排除しているではないか。これでは農家は安心して転作できない」という追及にも沈黙を決め込みました。

 さらに「ギョーザ問題や食品価格の高騰で、食料自給率の向上を求める国民世論が高まっているが、農水省はどう受け止めているのか」という問いには、「余っているお米を作って、自給率が向上するんですか」という暴言まで飛び出す始末。

 また農民連は、生産調整一般を否定したことはかつて一度もないこと、ペナルティーなどの強制的な減反ではなく、自給率向上に役立つ転作支援策の充実を提案し、飼料稲など生産の現場でも取り組んでいることを強調しました。当初は「農水省の(強制減反の)やり方に反対なら、生産調整反対の団体だという大臣答弁は間違っていない」と強弁していた石橋氏も、やっと最後に「農民連を名指ししたものではない」と言いつくろいました。

 三月三日には、山形県農民連も、山形農政事務所に要請を行いました。

 東北六県の農民連でつくる東北農団連は、三月二十四日に仙台で開催する総決起集会の準備をすすめています。


各地で激しい怒り・抗議

撤去や掲示中止相次ぐ

 ポスターへの激しい怒り、抗議を受けて、東北地方の県や自治体、農協などで、一度張ったポスターをはがしたり、張り出しを中止する動きが相次いでいます。

 ある県の担当課長は「生産調整に取り組もうとしている時に逆効果だ」。東北農政局庁舎のすぐ近くの宮城県庁では、最初から張り出しをボイコット。上半分を切って掲示していた青森県も二月いっぱいで撤去。秋田県庁には約百枚送られてきましたが、張ったのは一枚だけ。岩手、山形、福島は庁内に一度は張り出しましたが、はがしました。

 宮城県の米どころ、大崎地方の自治体や農協では、一枚も張られていないことを地元紙が伝えています。数十枚のポスターが届けられたみどりの農協では、「生産者をいたずらに刺激する」(営農部長)として支店も含めて掲示せず、「ポスターは金庫で保管中」とのこと。

 農協ではあいづ農協(福島)が掲示を見合わせたほか、青森県のつがるにしきた農協の幹部は「生産者の心をわかっておらず、農政不信になってしまう。転作に協力してほしい感じが全然しない」と地元紙に語っています。

(新聞「農民」2008.3.17付)
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2008年3月

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