「農民」記事データベース20080218-816-09

家栄研が食育学習会

大阪千代田短期大学幼児教育科非常勤講師
山崎萬里さんが講演

 家庭栄養研究会は一月二十七日、東京都文京区で食育についての学習会を開き、四十一人が参加しました。(写真〈写真はありません〉

 大阪千代田短期大学幼児教育科非常勤講師の山崎萬里さんが「食と農を生きる力に」と題して講演を行い、その後、四つのグループに分かれて討論。家庭や学校、地域での食教育の実践例や考え方を交流しました。


「食」と「農」を生きる力に

心と体と社会の健康を高める食生活
山崎萬里さんの講演(大要)

 人間観の見直しを

 人間がまともに生き、育つには、食農教育なしにはありえないと考えます。心の病が急増し、年間自殺者は三万人を超え、若年齢化しています。

 児童・生徒の「自分への自信」の国際比較では「価値のある人間だと思う」が三七%にすぎず、国際的にも低い状況です。

 二〇〇八年一月の答申では文部科学省が教育目標に掲げる「生きる力」の「健康や体力」の面が家庭責任とされ、社会に役立つ「人間力の向上」が強調されています。財界は国際競争に勝てる「人的資源」を求めています。

 私たちの人間観をもう一度見直すときです。

 たいていの人は「人の体にとって、最も大事なところは?」と問うと、「脳」と答え、「基礎となる臓器は?」と問うと、「心臓」と答えます。しかし、もっとも基礎となる臓器は、胃腸なのです。

 短大で個々の学生の健康調査実習を十五年やってきて、学生とともに気づいたのは、生活の場での「食べる、出す、寝る」の実態が授業態度、落ち着き、持続力、集中力、学業成績と深く関連しているということです。

 最近頻繁に起こっている青少年の犯罪には精神鑑定が重視されますが、精神の状態は体の状態の反映です。ムカツク心は体の結果であり、心は脳の働きであり、脳は体の一部分です。

 心を体や生活と切り離す人間観は問題の解決を誤らせると思います。

 病気はすべて生活習慣病なのでは

 大便は「体のくれる大きな便り」です。胃腸の働きは、心と体と生活の健康バロメーターです。「腹(はら)が据わっている」「腹が黒い」「腰を据える」「腰ぬけ」「腰が重い」などの言葉のように、腹や腰が人柄や意欲を表しています。古来より、内臓の健康こそが意欲とあらゆる能力の出発点であり、人格をも決めているということではないでしょうか。

 生活習慣病の条件は「食べる、出す、寝る、ストレス、生活リズム、適度な運動」の過不足です。これらの条件のすべてにたいして「気をかける、目をかける、ことばをかける、手をかける、金をかける」ことが予防と治療のベースになります。生きる力、能力とは、体の声が聞けること、つまり体、心、生活の健康管理能力を意味します。

 農業に学ぶ子育て

 「木・見・立」からなる親という字を私は「木を育てるように足を地につけて見守り、体を張って立つ」と読んでいます。漢字は農業社会の中で創(つく)りだされた先祖の英知の塊です。「木(いのち)」の育ちにとっての「根、土、肥やし」は子どもの育ちにとっても根本です。土は環境、肥やしは食べ物、教育、文化、コミュニケーションを意味します。根を張る子育てを、根は内臓です。

 いま子どもたちにとって土も肥やしも異常です。親のがんばりだけでは育ちにくくなっています。健全な子育ては社会の健康なしにはありえません。

 子どもは親が「思ったようには育たない、食べさせたように育つ」といっても過言ではないでしょう。

 食べ物が安全に供給されることの大事さは言うまでもありません。

 いのちを育てる農業から人の生き方、育て方を学べます。農業がゆがみ、衰退させられることは「いのちのゆがみと衰退」の道です。

(新聞「農民」2008.2.18付)
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2008年2月

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