本の紹介
宇野忠義著
『リンゴ農家の経営危機とリンゴ火傷病の検疫問題』
アメリカの圧力に抗して検疫の今後の課題を追求
リンゴやナシ、樹木に甚大な被害をもたらす火傷病。わが国では、火傷病が発生していたアメリカのリンゴは、輸入が禁止されていました。
しかし、輸入解禁を求めるアメリカは、WTOの紛争処理機関に提訴するなど圧力を強め、農水省は次々と輸入条件を緩和してきました。そして、アメリカの要求を受け入れた「火傷病防疫指針」を〇六年一月に制定、いまでは「火傷病の侵入に注意! 生産現場で火傷病と疑われる症状を見つけた場合にはご連絡を」などと呼びかけています。
こうしたアメリカの理不尽な圧力に対して、「火傷病が日本に絶対に侵入しないよう検疫措置を断固堅持せよ」と一貫して主張してきたのが、弘前大学教授の宇野忠義さんです。その宇野さんが、この間発表した論文をもとに書き上げたのが、この本です。
第一章は、リンゴ果汁輸入の急増が日本のリンゴ経営に与えた影響。第二章は、最重要病害リンゴ火傷病の日米検疫問題の経過と今後の課題。そして最後に、WTO体制の特徴とその影響・問題性、リンゴ経営及びリンゴ火傷病の検疫問題への今後の課題について、論じています。
宇野さんとリンゴとのつきあいは、十三年前に弘前市に移住して、旧相馬村のリンゴ農家の募集に応じてリンゴの木のオーナーになってから。台風の時にはリンゴ園に駆けつけ、はらはらしながら木や実をいたわったという宇野さん。リンゴ農家の苦労と努力が報われる政策を願う思いが伝わってきます。
▼ 定価 460円+税
▼ 発行 弘前大学出版会 TEL0172(39)3168
(新聞「農民」2008.2.4付)
|