第10回大豆畑トラスト運動交流集会
もっと知りたい 世界の大豆のこと
GM大豆はいらない
遺伝子組み換えでない安心・安全な国産大豆をもっと作って、食べようと、農家と消費者が手を結んで始まった大豆畑トラスト運動。今年で十回目を迎えた全国交流集会が一月二十二日、東京都世田谷区・三軒茶屋で開かれ、集まった約百人の農家、消費者は、世界や国内の大豆の現状を学びました。
集会に先立ち、大豆料理をふんだんに使った昼食会。大豆カレー、おからケーキ、おからサラダなど秀明自然農法ネットワークのみなさんによる手作り料理に舌鼓を打ちました。
三人の報告者が大豆と遺伝子組み換え(GM)問題について講演。参加者からGM食品の表示を求める紙芝居も披露されました。
安心・安全な国産大豆
もっと作って食べよう
石黒昌孝さん(農民連食品分析センター所長)
バイオ燃料増の影響で大豆在庫が減少傾向
世界の穀物在庫率が大きく落ち込むなかで、大豆も前年度比七・七ポイント減の一九・七%に減少する見込みです。アメリカで、バイオ燃料用トウモロコシの作付けが増える一方、大豆生産が減っています。中国への輸出用大豆の増加も加わり、大豆在庫量が減少傾向にあります。投機マネーの流入で穀物や大豆の価格が暴騰し、食料品や家畜飼料も高騰。畜産農家は大打撃を受けています。
大豆作付世界一のアメリカでは、GM大豆の収穫割合が九一%と増加し、アメリカから八〇%を輸入している日本は大豆の自給率はわずか五%。私たちの食卓にGM大豆が出回る割合は六九%にのぼります。
分析センターの検査でも、「GM不使用」表示の豆腐からGMが検出されました。GM大豆は除草剤グリホサートを散布しても枯れにくい性質をもつため、除草剤が残留しやすく、安全面からみても問題です。国産大豆は健康食品として見直されつつあります。
農家にとって大豆を作る条件は年々厳しくなっています。国産大豆は米の転作作物として作ることが多くなっていますが、大豆への補助金が減らされています。
価格保障を行い、国産農産物の生産を高め、産直など農家と消費者とが一緒になることが、自給率を向上させるために必要です。食糧主権を確立させましょう。
下郷さとみさん(フリージャーナリスト)
ブラジルでは熱帯林伐採、大豆栽培年々増加
ブラジルでは大豆生産が南部から始まり、北部に広がっていきました。大豆の栽培面積は年々増え続け、生産量はアメリカについで二番目です。
アマゾンの熱帯林を伐採して農地を広げ、開発に伴う道路、鉄道、水力発電ダムの建設が自然・生態系破壊に拍車をかけています。伐採後の野焼きは大気汚染を引き起こしています。カーギルやブンゲなど穀物メジャーの倉庫も各地に点在しています。
ブラジル全土の大豆生産量に占めるGMの割合は〇八年には六〇%になる見込みです。生産量が国内で二番目に多いパラナ州では、州知事が〇三年にGM作物の栽培禁止州法を制定しましたが、最高裁判所で無効の判決が下されました。しかし現在でも反GMOの論陣を張っています。
天笠啓祐さん(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表)
GM栽培急増する豪州 日本の食卓を左右する
オーストラリアでは中央政府が州に圧力をかけてGM栽培を推進しようとしています。ナタネを豪州から多く輸入している日本では、豪州でGM栽培が解禁されると、GM食品を拒否できなくなる可能性があります。
バイオ燃料ブームの背景には、アメリカのエネルギー・食糧戦略と、ブッシュ米政権を支える穀物メジャー、バイテク企業の種子支配確立の意図があります。非GM作物の入手が困難になりつつあります。
現在市場化されているGM作物は除草剤耐性、殺虫性だけです。干ばつ耐性のGM作物を開発して収量増を図ろうとしていますが、植物が本来持っている仕組みを改変するものであり、その植物の生存自体を脅かしかねません。GM作物は作らない、取り扱わない、食べないの立場を貫くことが大切です。
トラスト産地からの報告
春日部楽農倶楽部大豆生産部会(埼玉)の西村正昭さんは「温暖化の影響で今後大豆が作れるか不安だが、がんばって作り続けたい」と語り、県南筑波農産センター(茨城)の生産者、三浦光男さんは「除草剤を使わないと金がかかるが、安全・安心なものを作りたい」とのべました。
東京の交流会に初めて参加した広島大豆トラストの木戸菊雄さんは、十年間の集大成として、「消費者との交流を続け、森のレストランなど癒しの場を提供したい」と決意を表明。栄町大豆畑トラスト(新潟)の味岡久美子さんは「自分たちでみそや豆腐を作り、地産地消を進めることがエコにつながり、自給率を上げることになる」と語りました。
若者たちのグループ、トージバの渡邉尚さんは、遊休耕地で地大豆を栽培する大豆レボルーションの取り組みを報告。「仲間のGMへの関心も高まっている。地域で参加し、地域から変えていきたい」と発言しました。
(新聞「農民」2008.2.4付)
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