バイオ燃料
食糧穀物への影響を懸念
新技術開発まで棚上げを
国連人権委員会報告書が提言
「緊急課題」に
国連の人権委員会は、二〇〇七年八月二十二日付で「食糧に対する権利」に関する特別報告者ジャン・ジグレール氏による暫定報告書を発表しました。
報告では、まず最近の動向を分析し、ラテンアメリカ・カリブ諸国での食糧・農業政策での前進を紹介、南部アフリカを中心とした深刻な食糧情勢を報告しています。
とくに今回の報告で注目されるのは、バイオ燃料が食糧への権利に与える影響について「緊急課題」として取り上げたことです。報告者は、バイオ燃料は「農産物燃料」であり、トウモロコシ、砂糖、小麦、パーム油などの食糧作物が燃料に転換されていることに大きな懸念を表明しています。一台の自動車にタンク一杯(約五十リットル)の燃料には、一人の人間が一年間食べるに十分な量のトウモロコシが必要とされます。報告者は、「いまや自動車を所有する八億人と世界の二十億人にのぼる最貧困者との穀物をめぐる直接競争になった」というレスター・ブラウン氏のアメリカ上院での発言を紹介しつつ、バイオ燃料の影響を次のように分析しています。
影響の分析は…
まず第一は、食糧価格の高騰です。すでに過去一年間でトウモロコシ価格が二倍に上昇、トウモロコシ生産へのシフトで大豆生産が減少し、大豆価格も大幅に高騰しています。
第二に、土地と森林をめぐる抗争が、各地で多発していることです。そのために森から強制立ち退きを迫られる人々が増加しています。
第三は、農業労働者への影響です。ブラジルのサトウキビ・プランテーションでは、過剰搾取による奴隷労働化が拡大していると報告されています。
第四は、バイオ燃料生産が大量の水を必要とし、このために水の欠乏が深刻化し、水価格が上昇して貧困地域に困難をもたらしています。
こうした分析をふまえて、報告書は、食糧穀物以外の原料をつかった「第二世代のバイオ燃料生産技術」が開発されるまで、五年間の棚上げ(モラトリアム)を提言しています。
(H)
(新聞「農民」2008.1.28付)
|