タイ・中国 FTA前倒し
中国野菜の大量輸入
国内価暴落 転作迫られるタイ農民
他国より早く03年10月から
ASEAN(東南アジア諸国連合)十カ国と中国の間では、世界最大規模といわれるASEAN―中国FTA(ACFTA)が二〇〇二年十一月に「枠組み協定」の形で締結されています。
そのなかで、物品貿易については、ASEAN先発六カ国とは二〇一〇年、その他四カ国とは二〇一五年に、九〇%を超える品目の関税撤廃が実施され、自由貿易地域が形成されることとなっています。これに先立ち、一部の例外を除く農水産物については、アーリーハーベスト(早期収穫)措置として、二〇〇四年一月から関税引き下げが実施され、〇六年には関税が全面撤廃されました。タイと中国の間では、この前倒しがさらに一足早く、二〇〇三年十月から開始されています。
NGOのサジン氏が深刻な報告
その結果、タイではどんなことが起きているでしょうか。タイに本拠があるNGO「フォーカス・オンザ・グローバルサウス」のサジン氏によれば、次のような深刻な事態が報告されています。
二〇〇三年から二〇〇六年までに、中国からタイに輸入された野菜・果物は、年平均で七二%ずつ増加し、とくに初年度の二〇〇三年には、前年比二・六倍となっています。きのこ類・ニンニク・にんじん・かぶ・タマネギなどの野菜(グラフ)と、リンゴ・ぶどう・なし・いちご・みかんなどの果物が中心です。その結果、二〇〇四年には、タイ国内の野菜が暴落し、ニンニクで四七%、赤タマネギで四一%、タマネギでは八〇%という値下がりとなり、約十万世帯の生産農家に深刻な影響をもたらしました。
競合物の面積を半減させるが…
タイ政府は、その対策として競合作物の生産面積を半減させ、ニンニクをトウモロコシやジャガイモに転換させるなど、補助金つきの転作方針を出しましたが、新品目の生産技術習得も困難を極めています。
一方、大規模アグリビジネスは、これをチャンスとばかり、転換品目での契約農業を推進しており、タイ農民はようやく誰のためのFTAなのかを理解しはじめています。
(山本)
(新聞「農民」2007.12.3付)
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