政府の「米緊急対策」について二〇〇七年十月三十日 農民運動全国連合会会長 白石淳一
一、農水省は十月二十九日、米価暴落の緊急対策を発表した。その内容は、(1)政府が三十四万トンを年内に買い入れて百万トンの備蓄水準を確保し、備蓄米の市場への放出を当面、抑制する、(2)全農が抱える十八年産十万トンの販売残を飼料処理に政府が助成する、(3)「くず米」については、全農に主食用から除外する集荷・販売体制の確立を求めている。 農民連は九月二十八日、政府に対して百万トン水準の備蓄を確立するための緊急買い入れなどを柱とする「緊急対策」を発表した。そして全国いっせいに運動を展開し、十月一日には食健連と共同して全国から二百人余の農民、消費者、労働者が結集して米価下落対策を求める中央行動を実施してきた。 農民連の主張やたたかいは、米価下落に苦しむ農家の共感を呼び、稲作労賃が時給二百五十六円(平成十八年度)という異常な事態に、千円の最低賃金をめざす労働組合や、国内産米の安定供給を願う市民団体から驚きと抗議の声が巻き起こり、これらが力となって政府・与党を揺り動かした。農民が、広範な国民や農協など農業関係者と共同して政治を動かした画期的な成果である。 一、同時に今回の政府の「緊急対策」は、重大な問題を含んでいる。 第一に、米価下落の最大の原因であり、破たんが明りょうな「米改革」路線に固執し、本来、国の責任である米の需給調整を農協組織など生産者団体におしつけている。 第二に、産地作り交付金の若干の積み増しを打ち出しているものの、転作条件の整備・拡充が不十分なまま、生産調整の厳格な実施を打ち出し、未実施者への強力な対応や、生産調整目標を達成しない都道府県や地域に対して、「他の補助金等の採択や配分について考慮する」とし、強権的な減反政策をうちだしている。 第三に、流通が不透明で、米価に影響を与えている輸入米(SBS)の主食用販売を野放しにし、百七十万トン以上にも積みあがっているミニマムアクセス米の在庫一掃に背を向けていることなどである。 一、農民連は、政府が一刻も早く備蓄米の買い上げを実施することを要求する。そして、生産コストを償う水準の価格を要求する。 国民の主食・米の安定的な生産と供給を確保するため、「米改革」を中止し、すべての農家を対象にした価格保障政策を実現することを要求する。同時に、生産調整の実施にあたって、強権的な押し付けをやめ、食料自給率の向上につながる転作条件を拡充することを要求する。
(新聞「農民」2007.11.12付)
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[2007年11月]
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