若い人もお年寄りもともに
生きがい感じるふるさとに
よみがえった養蚕の里
旧東和町の“心”を残したい 福島
葉・実を活用し加工品
お茶・カステラ・アメ・焼酎・パン…
今もアイデア生かし“人気商品”次々
福島県安達地方は、群馬県についで養蚕の盛んな地域でした。しかし、輸入品や化学繊維に押されて養蚕は衰退。中山間地に荒れた桑畑が放置されました。いま、荒れ放題の桑畑を、桑の葉や実に秘められた成分(食物繊維やビタミンが豊富、カルシウムは牛乳の二十倍以上)を活用して、お茶や羊かん、ジャムなどの加工品づくりでよみがえらせようと、取り組みが進んでいます。
里山に光をあて原風景を子らに
この取り組みを進めているのが、「NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」です。その目的は「里山の恵み、歴史と文化、景観を保全し、地域資源循環のふるさとづくりを推進し、顔と心の見える交流を通じて、住民福祉と健康増進をはかり、住民主体の地域活性化」。二〇〇五年十二月に二本松市と合併して東和の町名が消え、「過疎がいっそう進むのではないか」と不安の声もあがりました。そこで、有機産直のグループやグリーンツーリズムをやっていたグループなど七団体が集まって、NPOをはた揚げしました。そして、この目的に賛同した地元の農家や商店主などの会員は、二百二十人以上。二十人の理事が特産推進加工委員会や有機産直委員会、人まち環境委員会などで、責任をもって取り組むシステムになっています。
この協議会の理事長は、農民連の会員でもある菅野正寿(すがのせいじゅ)さんです。菅野さんは「宮沢賢治が書いたように、若い人もお年寄も働くことが歌い踊るように楽しく、ともに生きがいを感じるようなふるさとをつくっていきたい。そして、里山に光をあて、この原風景を子どもたちに残したい」と話しています。
道の駅で売店、加工所も兼ねる
菅野さんたちは、桑づくりに輝きを取り戻したいと、桑薬生産組合を設立。十四人の農家が減農薬栽培に取り組んでいます。七月から九月にかけて桑の葉を摘み取り、桑の葉パウダーや桑茶、桑カステラ、桑飴、そして桑の葉で作った焼酎「くわ草々」などの加工品に。さらに、地元のパン製造や養蜂の会社と共同開発して、「桑の葉入りマンナンパン」や「毎食たべる桑茶ローヤルゼリー」を商品化して販売しています。こうして当初二十トン程度の桑の葉の生産量は、二〇〇六年には四十トンと倍増。耕作放棄地から再生した桑畑は、六十ヘクタールにまでおよんでいます。
そして、桑の葉の加工・販売を行っているのが、二本松市から運営を委託されている「道の駅ふくしま東和あぶくま館」です。ここは売店だけでなく、加工所と体験学習施設を兼ね備え、加工所では地元の若い人が働いています。車の交通量が少ないので、特色ある店づくりが求められていますが、なんとか黒字経営を維持。
今年の四月から、生協で三〇年余り働いていた富樫隆二さんを店長に迎えました。この夏は、トマトやキュウリなど旬の野菜入りアイスクリームが大ブレーク、行列ができる人気商品になりました。富樫さんは「アイスクリームに代わって冬場の“名物”をどうするか。たとえば、目の前にある野菜をオーダーして作る“野菜ジュース”はどうだろうか」と、アイデア発掘に余念がありません。「東和は“人の和”が強いところ。生産者もいい品物をつくろうとがんばっている」と期待を寄せています。
(新聞「農民」2007.11.5付)
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