トラクター先頭に怒りのデモ 新潟
「これじゃあ米作り続けられない」
政府は「米価下落対策」とれ(1/2)
「内金1俵7000円」に驚きと怒りの声
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今年も下げ止まらない米価の下落に農家から「これじゃあ、米作りは続けられない」との悲鳴があがっています。結局は「売れる米づくり」をめざすとして、政府が強引に進めてきた「米改革」の行きつく先が米価の下落にあることがはっきりしました。
「内金方式」は米価下落を誘導
政府のいう「米づくりの本来あるべき姿」とは、主食である米を国民に安定供給する国の責任を全面的に放棄し、もっと米価を下げて「売れる米」を生産することです。同じ土俵の上で「米改革」を推進しているのが、農協の経済事業を担当する全農(全国農協連合会)です。
全農が打ち出した二〇〇七年産米の集荷方式に驚きと失望の声が広がっています。全農は、従来の販売を見込んだ仮渡し方式から、内金で米を集め、販売の動向を見ながら追加払いする概算方式に転換。内金の水準はなんと一俵(六十キロ)七千円。これは生産コストの半分以下。「このままではとても集荷などできない」(農協)という声が続出。農家から「七千円でどうやって資材や農機具代、肥料代を払えと言うのか」という声があがっています。
「内金七千円」方針は、業者の買い控えを生み、二回実施された米価格形成センターの〇七年産の入札は、いずれも落札ゼロの異例の事態でした。
本音は作付け抑制
業界紙などは、全農の方針転換について「過剰作付けで供給過剰の恒常化と販売競争の激化で長期の販売見通しが立ちにくい。低めの内金で売れ行きに応じて追加払いをする。需給と品質を反映した価格で早期に売り切り生産者の手取りを確保する」と伝えています。関係者は一様に「全農自身が安売り競争に踏み出し、価格を落とすところまで落とし、作付けを抑制する戦略」とみており、その影響ははかりしれないものがあります。
農水省がまとめた〇六年産の米生産費調査によれば、一俵(六十キロ)あたりの米生産にかかる費用(資材費、労働費、地代・利子など)は、一万六千八百二十四円。
一方、米価格形成センターが発表した〇六年産の入札価格(すべての取引の全銘柄総加重平均)は、一万四千八百二十六円。流通経費などを差し引けば農家は一俵出荷するたびに五千円近く赤字が発生するという異常事態です。
面積で農家をふるい落とす「品目横断的経営安定対策」が実施され、米の加入申請は面積で二六%。対策から漏れる四分の三の農家は、米価暴落の影響をまもとに受けます。政府は「過剰作付けが米価下落の原因」と称して、「対策」からはずされ、なんら義務のない農家を責めたて、執ように作付け制限を求めていますが、この米価では、いっせいに米作りから手を引くおそれさえあります。
政府の「米対策」に重大な責任
昨年産は、生産量(八百四十万トン)が需要量(八百四十四万トン)を下回り、繰越在庫も二年続けてマイナス状況にもかかわらず、下がり続ける米価。国際的には、米の需要が増えているもとで、オーストラリア産の不作やアメリカでの作付面積の減少などにより、米の国際相場は五年間で二倍になっています。
国内では下がり続ける米価の原因は、過剰作付けや米余りではなく、米流通を市場任せにし、買い手のない輸入米を二百万トン近く積み上げ、備蓄米を古古米にして超低価格で市場に垂れ流して、米の需給と価格の安定に責任をもとうとしない政府の「米政策」そのものにあります。
対策を求めて各地で行動
こうした異常事態にたいして、山形県の庄内農民センター(遠藤重輔組合長)は八月二十七日、全農庄内本部を訪れ、再生産を保障できる水準の米価を実現するため、誠実に努力することなどを申し入れました。
また新潟県農民連は九月四日、新潟市中心部でトラクター二台と軽トラック二十台でパレードを行い、全県から三十人が参加。マスコミが多数取材するなか、決起集会で町田拡会長は「生産が続けられる価格を求め、運動を強めよう」と訴えました。
農民連 政府に緊急対策を要請
農民連は、「米改革」の下で生産費を大幅に下回る異常な米価の改善を求める「緊急対策」を政府に要求しています。
要求は次の通り。
(1)備蓄米の買い入れにあたって、政府自身が決めた百万トン水準に見合う買い入れを確実に実施すること。また、備蓄米は緊急時以外は放出せず、役割を終えた備蓄米は主食用には使用せず、他の用途に振り向けること
(2)輸入米を主食用として販売することを中止すること
(3)ミニマムアクセス米の輸入量を削減するとともに、積み上がっている在庫を飼料用や海外援助などに振り向けて在庫を一掃すること
(4)くず米を混入して主食用として安値で販売することを規制すること
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農民連は、十月一日に農水省や国会に向けて、米問題での要請行動を予定しています。
(新聞「農民」2007.9.17付)
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