「農民」記事データベース20070827-793-17

土に根をおろして元気に働く農家の人々を

農業の応援歌のつもりです

農業をテーマに撮りつづける写真家 〓橋淳子さん

 「農業の応援歌のつもりで、写真を撮っています。この豊かな世界を、映像として多くの人に伝えたい」――こんな思いをこめて農業をテーマに写真を撮り続けている写真家がいます。千葉県柏市に住むフリーカメラマンの〓橋淳子さんです。

 〓は高の異体字、はしご高。


農家の生きている証しを写しとめる挑戦いまも

 村が消えてしまうの老人のつぶやき

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種ショウガを掘り出す。
本当に楽しそうに農作業
していた=千葉県印旛郡

 農家でもなく、「写真といえば家族写真くらい」だった〓橋さんが、農業カメラマンになった始まりは、「絵画の勉強に」と通 販で買った一台のカメラでした。たまたま応募した町の写真展で町長賞に輝き、写 真の虜(とりこ)に。しばらく同好会で風景写真を撮っていましたが、「もっと人物を撮りたい」と思い始めたころ、たまたま訪れたある村で、「平成の大合併で、村が消えてしまう」と寂しそうにつぶやく老人と出会います。「そうだ。村人を撮ろう。村の暮らしを写 しとめておこう」。地図を広げて「村」とつく所を訪れ、撮り始めたのが五年ほど前のことでした。

 
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東京・新宿中央公園内の
ビオトープの田植え体験
 ところが昼ひなかに出会える村人は、農家のお年寄りばかり。「何も知らなかった私には農業はとても新鮮でした。みんな農業が好きで、やりたくてやっている。土に根をおろして生き生きと働く農家の人びとを撮っていきたいと思うようになったのです」と〓橋さん。

 

 同時に、後継者不足や農産物価格の下落など農業の抱える問題にも直面することになりました。「後継者のいる農家は、表情も明るいのです。たとえ小さな農家でもたくさんいれば、その産物で養える食料も増えるはず。小さな農業を切り捨てないでほしい」と言います。

 都庁真下の田植え体験も写真集に…

 今、〓橋さんの関心は、「農家」から「農業が紡(つむ)ぐ人のつながり」に広がり始めています。「トマトを一苗でも育ててみれば、作物は世話をしなければ育たないということがわかり、農家の苦労が共有できます」――東京都庁真下の田植え体験、赤坂のバケツ稲の写 真などを収めた『東京「農」23区』にもその思いが込められています。

 
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田植えは一家総出で、お嫁さん
もそろって笑顔=千葉県印旛郡

 それにしても、農家を「イキイキと」写真に撮るのはたいへんです。「最初は“何してるんですか?″といった誰でも返事を返してくれる言葉で話しかけるんです。話し込むうちに農家は作業を再開しますよね。そこからがシャッターチャンス」。そのままご馳走(ちそう)になることも数え切れないそうです。

 「農家を支えるには、消費者が農業に目を向けて、食べ支えることが必要だと思うのです。写真を通じて農業を支える人々の姿とを伝えること、それが私の仕事です」という〓橋さん。「農家の生きている証しを写しとめる」挑戦が続いています。

 ▼写真集『東京「農」23区』 2100円(税込み) 文芸社 電話03(5369)2299
 ▼写真集『東京近郊農家』 2800円(税別) 東方出版 電話06(6779)9571

〓は高の異体字、はしご高。

(新聞「農民」2007.8.27付)
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2007年8月

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