本の紹介
若月俊一の遺言
農村医療の原点
“若月思想・若月イズムを 風化させてはならない”
「農村医療の父」と慕われた若月俊一さんが亡くなって、はや一年が経とうとしています。亡きがらを乗せた車が、佐久総合病院(長野・佐久市)の玄関前をゆっくり走り去ろうとしたとき、その前に並んで見送った千人を超す職員の間から、期せずして若月さんが作詞した「農民とともに」の合唱がわき起こったそうです。
「若月氏の亡きあと、後に残された者が一様に思ったことは、五十数年にわたって築きあげられた『若月思想』『若月イズム』を、決して風化させてはならないということだった」と、この本を編集した松島松翠さん(佐久総合病院名誉院長)は言います。そして「日本の若い世代にどう引き継いでいったらいいのか」―この思いが本書の出版になりました。
本書は、三つの章に分かれています。第二章の「一人ひとりが『地の塩』となって」では、自治体問題研究所理事長(当時)の宮本憲一さんとの対談「農村医療の現場から二十一世紀を考える」のなかで、若月さんはこう述べています。「農業と土は母であり、すべてを創造する一番の基本である。あの山と水と緑を守らなければ、国全体がだめになってしまう。わたしたちがそこでがんばっていれば、みんなが見直してくれる日がきっと来る」と。
松島さんは「若月氏の論文出版は、これが最後になるだろう」と述べ、ぜひ「若月イズム」といういわば「実践の哲学」をこの本からくみ取ってほしいと呼びかけています。▼定価 2730円▼発行 家の光協会03(3266)9029
(新聞「農民」2007.8.27付)
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