「農民」記事データベース20070827-793-05

まさに「亡穀」「亡国」への道

日本の穀物
輸入完全自由化したら自給率2.7%に

炎熱の砂漠の国や極寒のアイスランド並みに

関連/日豪FTA・WTO交渉反対などで緊急集会


世界の175カ国中、ビリから22番目に急落

経済財政諮問審の試算をあてはめると

 農産物輸入を完全に自由化した場合、カロリー自給率が四〇%から一二%に下がる――農水省が二月に経済財政諮問会議に示した試算に対する衝撃が広がっていますが、同じ手法で試算すれば、穀物自給率は二八%から、十分の一以下の二・七%に低下することが明らかになりました。農民連が農水省のデータをもとに試算したもの(表)。
完全自由化の場合の穀物自給率試算 単位 :千トン、%
 
現状(2005年)
完全自由化の場合
消費量
国内生産量
自給率
国内生産量
自給率
穀物計
35,664
10,090
28
975
 
2.7%
9,222
8,998
98
90
090%減少
9.8%
小麦
6,213
875
14
9
99%減少
0.1%
大・裸麦
2,281
183
8
66
64%減少
2.9%
トウモロコシ
16,130
0
0
0
 
0
コウリャン
1,301
0
0
0
 
0
出所 現状は農水省「食糧自給表」、完全自由化の場合の試算は農水省「国境措置

画像 試算の方法はきわめて簡単。国内生産量 は農水省が試算した生産減少率(米九〇%、小麦九九%、大・裸麦六四%)をもとに計算し、消費量 は現状維持を前提にしました。その結果、米の生産量は九十万トン、小麦は九千トン、大・裸麦は六万六千トンで、穀物全体で百万トン以下になります。

 穀物は主食として人間の基礎的食糧であるとともに、家畜の飼料として必須の農産物。さらに、米・麦のワラ(セルロース)は地力維持に不可欠で、いわば土壌にとっても「主食」です。「亡穀」は「亡国」への道です。

 現状の穀物自給率二八%自体が百七十五カ国中百二十四番目、サミット参加国で最低という異常な数値ですが、二・七%は、それに追い打ちをかけて異常事態。

 二〇〇三年現在、穀物自給率二〜〇%の国は二十二カ国。いずれもアイスランドのような極寒の国かアラブ首長国連邦、クウェートのような砂漠国、バミューダ諸島のような小島国です。

 人口が一億を超え、アジア・モンスーン地帯に属して穀物生産に適した条件を備えている日本が穀物生産を壊滅させる――こんな破天荒なやり方を許すわけにはいきません。まして、アメリカ主導で、穀物を人・家畜と自動車が奪い合うという破滅的な事態が進んでいるのですから。


日豪FTA・WTO交渉反対などで緊急集会

 日豪FTAの第二回交渉が始まった八月六日、東京都内で「日豪FTA・WTO農業交渉 農産物輸入関税引き下げ・輸入枠拡大反対! 生産者・消費者緊急集会」が開かれ、様々な農民組織やNGO、消費者団体が参加しました。

 集会では、自治体での意見書採択が全国で五百二十五に上っていることや、採択率が五〇%を超える県が九道県に広がっていることが報告されたほか、食健連を含む二十四団体が呼びかけている「日豪FTA交渉に対する日豪市民団体等共同声明」の賛同を広げることが提起されました。

 集会後、代表団が農水省、外務省にそれぞれ要請行動を行いました。

 愛媛県議会が政府へ意見書
 WTO・日豪EPAで

 愛媛県議会は七月四日、「WTO農業交渉・日豪EPA交渉に関する意見書」を採択し、衆参両院議長、総理大臣などに送付しました。意見書はWTO交渉について「食糧主権を可能とする貿易ルールを確立すること」、EPA交渉では「重要品目を関税撤廃対象から『除外』または『再協議』となるよう、断固たる姿勢での交渉」を求めています。愛媛県食健連は、同趣旨の請願を提出していました。

(新聞「農民」2007.8.27付)
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2007年8月

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